街々書林の今月の旅する1冊
吉祥寺中道通りに位置する「街々書林 Books & Gallery」の店主であり、旅に関する本を執筆してきた「旅行作家」でもある、小柳淳さんによる月イチの連載コラムです。本の世界の「旅」を、どうぞお楽しみください。
ゴッホ 旅とレシピ 〜街々書林の今月の旅する1冊
「週刊きちじょうじ」と「週刊きちじょうじオンライン」で毎月第1週にお届けしている「街々書林の今月の旅する1冊」。 「街々書林 Books & Gallery」は、旅にまつわる本や雑誌、雑貨を販売しているユニークな書店。吉祥寺中道通りに位置しています。街々書林の店主であり旅に関する本を執筆してきた「旅行作家」でもある、小柳淳さんによる月イチの連載コラム、本の世界の「旅」をどうぞお楽しみください。
ゴッホ 旅とレシピ
ゴッホ 旅とレシピ
林 綾野 著
講談社
価格:1,760円
発売日:2010年9月30日
ページ数:136ページ
書籍詳細
ゴッホの絵というと、ひまわり、糸杉、星と月、肖像、跳ね橋、カフェや教会堂などを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、ゴッホは食べ物もたくさん描いています。静物としてのタマネギ、リンゴ、燻製ニシン、そしてジャガイモを食べる人々。ゴッホは37年の短い生涯のなかで、旅と引越しを何回も重ねた旅人でもあるのです。そして各地の食材や食事の絵も描いています。オランダ、イギリス、ベルギー、パリや南フランスと南北の寒冷な地域から暖かな土地を移動します。南フランスのアルルやサン・レミでは陽光の強い土地、そしてゴーギャンとの共同生活とその破綻など強い印象を受けます。ただ、暖かな南仏の時期は短かったようです。
この本はゴッホの旅と移住の足跡をたどり、各地の料理や野菜、果実、魚介類などの食材を紹介していきます。オランダのチーズや肉団子、ベルギーではワッフルやムール貝。南仏のアーモンドのキャラメル焼を見ていると、アムステルダムのゴッホ美術館の名作「アーモンド・ブロッサム」が思い起こされます。ゴッホの絵や滞在した土地の風景、食材や料理の写真も多数掲載されていて眺めても楽しいのです。ページを進めると紀行文と料理のレシピが交替で現れてくる、ちょっと変わった楽しい本でもあります。