アンジェリカで映画の話を
毎月第2週にお届けする「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。
アンジェリカで映画の話を 〜『リトル・ダンサー』〜
「週刊きちじょうじ」と「週刊きちじょうじオンライン」で毎月第2週にお届けする「アンジェリカで映画の話を」。「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。
ANGELIKAは吉祥寺・中道通り近くに位置するこだわりのコーヒーとワイン、エッグタルトを提供するお店。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。
ANGELIKA・髙田さんからのメッセージ
初めまして。月イチの連載コラムを書かせていただくことになりました。“吉祥寺の映画館で公開中の中から選んだ1本”と“この映画を観たあとにお薦めしたいもう1本”をご紹介します。映画宣伝の仕事をしていますので、とっておきの情報もお届けしたいです。カフェ&ワインバルANGELIKAで共同店主もやっています。映画について語りたくなったら、ぜひいらしてください。
コラムの初回に選んだのは、24年前に初めてカンヌの映画マーケットに出張し、試写で出会い惚れ込んで、最終的に買付に関わった思い入れの強い映画『リトル・ダンサー』。残念ながら吉祥寺の映画館では上映していないのですが、私にとって特別な1本が今、リマスター版で全国公開中!“この1本”としてご紹介します。
『リトル・ダンサー』
身体中に電気が走るんだ!
『リトル・ダンサー デジタルリマスター版』
監督:スティーヴン・ダルドリー2000年/イギリス
新宿ピカデリーほか全国公開中
寂れた炭坑町の少年がバレエに夢中になる物語。当時「地味な話だから当たらないよ」と言われながら、公開するとたちまち口コミで広がりスマッシュヒット。いいものは多くの人に伝わるということを証明した映画として、私にとって特別な存在となった本作が、今、23年ぶりにリバイバル上映中です。
ビリーのひたむきな情熱と力強いダンスシーン。感動は今観ても色褪せません。周囲の大人たちがビリーに未来を託そうとする姿は、当時以上に心に刺さりました。逆境に打ち勝つのは難しいし、夢は時に苦悩となる。それでも、夢を諦めないことの素晴らしさを教えてくれる不朽の映画です。
「踊っている時はどんな気持ち?」と尋ねられたビリーが答えるシーンが好きです。夢中なものへの気持ちを言葉で表現できるようになりたいと思わせてくれます。ビリーを勇気づけるように流れるグラムロックの名曲の数々も最高です。
『リトル・ダンサー』を観たあとは、この映画がおすすめ!『ぼくのお日さま』
『ぼくのお日さま』
監督:奥山大史2024年/日本
アップリンク吉祥寺ほか全国公開中
吃音のあるアイスホッケーが苦手な少年、スケートに打ちこむ少女、選手の夢を諦めたスケートのコーチ。田舎街のスケートリンクで3つの心が通じ合い、ほどけていく様が描かれます。実はこの映画、奥山大史監督が『リトル・ダンサー』を初めて観た時の感動を込めて作ったのだそう。夢中になれることを見つけた少年の成長、言いたいのに言えないこと、言いたくないのに言ってしまったことに大人も子供も悩むシーン、そして、誰もが必ず誰かを支える存在なんだというメッセージ。監督の想いがいたるところから伝わってきました。 ハンバート ハンバートの楽曲「ぼくのお日さま」が流れるエンドロールで、この映画は完結します。主人公の少年の独白のように聞こえる歌詞が、少年の心にそっと寄り添うような感覚に浸らせてくれるのです。映画のエンドロールは、監督からの“余韻”のプレゼント。余韻をじっくり噛みしめる時間も、映画の愉しみです。