前進座 舞台のいろは

前進座 舞台のいろは

前進座 舞台のいろは「旅」

1931年に創立した前進座は、東京都武蔵野市を本拠とする日本の歌舞伎も上演する劇団です。

歴史ある劇団から舞台の裏側を学べるコラム「前進座 舞台のいろは」では、舞台まわりの小道具の紹介や知られざる役者さんのあれこれをご紹介します。

地方巡演の事を我々は一言で「旅」と略します。旅は長いものになると2ヶ月近く続く事もあり、季節をまたぐ旅になると両方の季節の服を持たなくてはならなくなるので、かなりの荷物になってしまいます。なので、衣類を圧縮出来るバッグは大変重宝します。ところが、質量保存の法則は絶対で体積は減っても重さは変わりません。然るに役者の荷物は見た目の割に重いです。
 それから大変なのは洗濯。ホテルのコインランドリー代も馬鹿になりません。そんなわけで、公演中は他の荷物と一緒に洗濯機もトラックに積んで移動。劇場のシャワールームに設置してみんなで順番に洗濯。外に干し場を作って干します。沢山の洗濯物が干された景色はいかにも旅一座という風情。
毎日洗濯すれば2日分の着替えで旅が出来るという強者も、いるとかいないとか。

執筆 俳優 上滝啓太郎