前進座 舞台のいろは

前進座 舞台のいろは

前進座 舞台のいろは「美味しい“消え物”」

1931年に創立した前進座は、東京都武蔵野市を本拠とする日本の歌舞伎も上演する劇団です。

歴史ある劇団から舞台の裏側を学べるコラム「前進座 舞台のいろは」では、舞台まわりの小道具の紹介や知られざる役者さんのあれこれをご紹介します。

美味しい“消え物”

今回ご紹介するのは「消え物」。

「消え物」とは読んで字の如く、食べたり飲んだりすることで、なくなってしまう消耗品や小道具のこと。

全国巡演中の前進座の歌舞伎、『人情噺 文七元結』での消え物といえば、“お菓子”と“蕎麦”。お菓子を食べる場面では、ご当地の有名なお菓子を準備し、実際に食べております。

お芝居中、哀れな娘「お久」の前で、「女郎」の私たちが能天気にお菓子を食べることで、哀れな様子をより引き立てます。

お蕎麦も、寒い中町人二人が本当に食べている様子から、季節感、江戸の風情を感じることができます。

“食べたふり”をしても良いのですが、こうして実際に食べているところを観ていただく事で、各場面にリアリティが増し、より作品に没頭していただける、のかもしれません(笑)

執筆者 俳優 玉浦有之祐