きち散歩

きち散歩

吉祥寺のおいしいものと散歩が大好きなわたなべえりさんによるコラムです。えりさんのすてきなイラストと共にお楽しみください。

シリーズ一覧

ゆりあぺむぺる

レトロでクラシカルに憧れて。

ゆりあぺむぺる、「聞いたことが不思議な響きだけど柔らかい音」と思うか、「ああ、宮沢賢治の『春と修羅』のユリアとペムペルか」と思うか、はたまたもっと別のことを思うか。人それぞれだけど、きっと受け取る響きやイメージそのままのお店が南口を出て右手に少し歩くと見えてきます。
吉祥寺で時間がゆっくり流れる空間はいくつかあるけれど、レトロでクラシカル、可愛らしいけどちょっと退廃的、そんなお店。外から見ると出窓と、彫刻が施された木の扉、たくさんの植物。そして「ゆりあぺむぺる」の文字。周りのお店とはちょっと違う、ここだけ少し昔のヨーロッパのような雰囲気です。木の少しだけ重いドアを開けると、中はほんのり暗くて、コーヒーのいい香り。2階もあるのだけれど、タイミングなのかいつもなぜか1階に案内してもらいます。可愛らしいくらげのようなランプが柔らかい光を放って、空間ごとふんわりとした温かい光で満たされています。

カウンターの中ではコーヒーや紅茶がご用意されて、いい香りが漂っています。お店の中には生花が飾られていたり、ピンクの電話があったり。ピンクの電話の横にはドライフラワーといくつか紙ものが置いてあって、その中には週きちも。上のランプからの光が表紙を照らしています。このランプたちはどれもアンティークで、どのランプもとっても可愛い。

ゆりあぺむぺるさんの外装のイラスト、内装のイラスト。

プリンとコーヒーと革張りの椅子と。

ゆりあぺむぺるはいろんなメニューがあって、いろんな人が頼むのは大きなクリームソーダ。InstagramやいろんなSNSで出てくるのはきっと色とりどりのクリームソーダだったり、かためのプリンだったり、でもそれ以外にもたくさんのメニューがあります。アレンジコーヒーだけでもホットアイス合わせて16種類もあって悩んでしまう、けれど今まであれこれ試した中で私が一番好きだ、と思ったのがスパイスコーヒーとゆりあぺむぺるのプリンを一緒に食べること。案内された革張りの柔らかすぎない椅子に座って待っていると、ほどなくしてやってきました。

まずはスパイスコーヒー。
スパイスといえばコーヒーではなくて紅茶、チャイのイメージが強いけれど、これはコーヒー。ブラックコーヒーにスパイスを合わせた温かいドリンクです。
最初にびっくりしたのが、カップが丸ではなくて六角形。ジバンシィのカップのようで、スパイスコーヒーの香りにマッチしたシャープな印象です。スパイスコーヒーにはシナモンスティックが添えられていて、それ以外にもオールスパイス、そしてクローブが1つカップの中に入っています。コーヒーの香りももちろん素晴らしいけれど、そこにオールスパイス、シナモン、クローブの甘いのにピリッとした香りがあわさってとっても素敵。

そして、ゆりあぺむぺるのプリン!
プリンは少し小ぶりで生クリームと赤いさくらんぼが添えられています。プリンはかたいプリン、という想像よりもみっちりむっちりしている、と言った方がきっとあっていて、しっかりしているのに濃厚でとても滑らか。バニラの甘い香りと生クリームの甘い香りがたまりません。卵の甘さ、バニラの甘さ、生クリームの甘さって全部方向が違うのに、1つにまとまってお口の中でとろけます。
そしてここでスパイスコーヒーをひとくち。普通のコーヒーでももちろん合うのだけれど、クローブのバニラのような甘い香りにシナモンとオールスパイスの甘い香りがプリンの甘い香りをさらに引き立てます。でも、ベースはブラックコーヒーだからお口はさっぱり。香りは甘いままだから、満足感はそのままにもうひとくちが進みます。

今日は食べなかったけれど、そのほかのおやつでおすすめはクリームソーダ、そしてマロンシャンテリー。
クリームソーダは色とりどりで、想像よりもずっと大きいサイズで提供されます。ベーシックなものと季節のものがあるのですがまず最初に飲んでほしいのはゆりあぺむぺるクリームソーダ。柘榴(ざくろ)のお味でほかでは飲めないクリームソーダです。柘榴の酸味に柔らかい甘味のアイスが乗っていて、なんだかそれだけで幸せになってしまいます。夜にだけのお楽しみ、Moon riverもおしゃれな味。ナイトテイスト、とは書いてあるけれどノンアルコール、ダークな色調のクリームソーダにレモンが添えられていてまんまるお月様みたい。

そしてマロンシャンテリー。栗のクリームを食べる、文字にしてしまえばただそれだけのお菓子ではあるけれど、それだからこそ美味しいのです。甘くてこっくりしていて、栗が滑らかだけれどぎゅっと詰まっています。公式のインスタグラムで紹介されていた、レモンコーヒーと合わせるのがとってもおすすめ、なぜならこのスイーツは甘い甘いクリームを楽しむものなので想像していたよりも甘味が強いから。レモンの酸味とコーヒーの苦味と酸味がこっくりとした栗とミルクのクリームをさらっとさせてくれます。

ずっとなんだか混んでいるゆりあぺむぺるだけれど、忙しない混みかたではなくて、ゆったり混んでいます。普段はきっとSNSで見たのであろう女の子たちが多いけれど、この前訪れた時は時間が遅かったのもあってサラリーマンや老夫婦がお茶を楽しんでいました。ずっとここにある喫茶店で、きっとこの先もあってほしいなあ、私がもっと歳を取っても楽しみにこれる場所であってほしいなあ、そんなことを思いながらスパイスコーヒーの残りひとくちをいただくのでした。

ジバンシィの六角形のコーヒーカップに入ったスパイスコーヒーと花の柄が焼き付けられた平皿に乗ったプリンのイラストとクリームソーダとマロンシャンテリーが描かれたイラスト。
ゆりあぺむぺるで使われているレトロなレジを操作するオオカミのキャラクターと、おすすめ3ポイントがまとまったイラスト。

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ゆりあぺむぺるさんでは週刊きちじょうじを配布しています。
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