アンジェリカで映画の話を
毎月第2週にお届けする「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。
アンジェリカで映画の話を 〜『旅と日々』〜
「週刊きちじょうじ」と「週刊きちじょうじオンライン」で毎月第2週にお届けする「ANGELIKAで映画の話を」。「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。
ANGELIKAは吉祥寺・中道通り近くに位置するこだわりのコーヒーとワイン、エッグタルトを提供するお店。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。

『旅と日々』
私はずっと、旅の途中にいるようだ

『旅と日々』
監督・脚本:三宅唱
2025年/日本
出演:シム・ウンギョン、堤真一、河合優実、髙田万作
アップリンク吉祥寺にて上映中

『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』の三宅唱監督最新作、シム・ウンギョン、堤真一が主演する注目作です。行き詰まりを感じ旅に出た脚本家が、辿り着いたおんぼろ宿でものぐさな宿主と出会い、再び脚本を書き始めるまでの数日間が、都会の喧騒を忘れさせる冬山の雪景色を背景に丁寧に描写されていきます。
『旅と日々』を観たあとは、この映画がおすすめ!『本を綴る』

『本を綴る』
監督:篠原哲雄
2023年/日本
出演:矢柴俊博、宮本真希、遠藤久美子
この映画は、2024年10月に劇場公開スタートし、全国各地の映画館を巡って、今年2025年11月に再び東京に戻り、アップリンク吉祥寺で上映されました。主人公は、『旅と日々』同様、もの書きを生業としていて目下スランプ中の人物。小説を書けなくなった作家が、那須塩原市図書館、京都の恵文社、香川の移動図書館を巡り、いくつもの出会いや再会をしながら刺激と温かさに触れるロードムービーです。

日常から離れ、どこか遠い場所に身を置く旅も、最後にたどり着くのは「自分の内面」なのだと感じた経験が幾度もあります。主人公の作家も、旅での出来事が自分自身と向き合うきっかけになり、書けなくなった理由にも勇気を持って向き合い、重圧を乗り越えます。

そしてこの映画には、「本の居場所」というもうひとつのテーマが描かれています。もともとは、「街の本屋」と「本」の魅力を伝えるために制作された配信ドラマ『本を贈る』のスピンオフ的劇場映画として生まれた作品。オンライン購入は便利ですし、電子書籍も手軽に楽しめるけれど、出会いの場所としての本屋、物としての本の存在が、本と人、人と人を繋いでくれることに気づきます。そして、本にとっても、必要とされている居場所があるということを、各地の素敵な本屋さんが教えてくれます。
監督は、『月ときゃべつ』『はつ恋』『影踏み』の篠原哲雄。全国各地の90にも及ぶ書店を巡り『本を贈る』『本を綴る』を作ったという、想いの込もった2作品です。