父から受け継ぐ味と、ほっこり包み込むランプの灯り。吉祥寺が守る喫茶店「珈琲 立吉」

2025年11月に開催されたコロモチャヤマーケット。そのマーケットで出会ったのが今回の取材先「立吉(たつきち)」二代目店主のかほりさんでした。

編集部とかほりさん、お互いにコロモチャヤさんの洋服を手に取りながら「今度ぜひゆっくり〜!」と和気あいあいな時間を共有できたこともあり、お友達とおしゃべりするような感覚でお話しを伺うことができました。

立吉は、1979年創業の喫茶店で、今年で47年目を迎えました。休日や花見シーズンにはお店の前に行列ができることもあり、吉祥寺の中でも人気のあるお店のひとつです。

2021年に創業者であるお父様から娘のかほりさんがお店を引き継ぎました。

編集部:お父様から引き継がれて、プレッシャーなどはありませんでしたか?

かほりさん:子どもの頃から、いつかは継ぐのかなと思っていたので、いざ継ぐと決まった時は「ついにきたか!」という感じでしたね。(笑)

編集部:かほりさん自身も子どもの頃からお店を手伝ったりしていたんでしょうか。

かほりさん:はい、父は地元の人間で、私も立吉は生活の一部でした。幼稚園の頃は、夕飯後にお店に遊びに行ってお客さんに遊んでもらったりして、お水出しをしたりなどさせてもらっていましたね。

編集部:コーヒーの淹れ方なども教えてもらったんですか?

かほりさん:今までは飲む専門だったんですけど、引き継ぐときに、父のやり方をそのまま教えてもらいました。同じように淹れてるんですけど、味が違うんです。不思議ですよね。

編集部:お父様の味と、かほりさんの味を両方飲んでみたいです。

かほりさん:昔からの常連さんは、父の方が苦味があるとすぐに味の変化に気づいてました!父は週末だけお店でコーヒーを淹れるので「飲み比べをしたい」と言って同じコーヒーを2杯注文してくれる方もいるんですよ。

編集部:昔からの常連さんはかほりさんの成長も喜んでくれていそうですね。引き継いで、お客さんからの反応はどうですか?

かほりさん:「まさか、かほりにコーヒー入れてもらうとは」と言って喜んでくれるのが、私も嬉しいです。本当の父親のように気にかけてくださる方もいてありがたいですね。

編集部:お客さまとの素敵な関係も立吉ならではですね。お父様が創業されたきっかけはあったんでしょうか。

かほりさん:このお店をつくった理由のひとつは、マルイができたことなんです。「マルイで働く人の休憩所としても利用できるように」って父が。当時は近所にパン屋さんがあって、そこのパン屋さんのパンを使って軽食メニューも提供していました。今はパン屋さんもなくなり、食事は出していないのですが、おやつを用意しています。

ブレンドコーヒー
オヤツスタンドさんのクッキーと、グラニーさんのスコーン

編集部:おいしいコーヒーとおやつでゆっくり過ごせるこの空間はオアシスのような存在ですね。家具なども良い演出になっているような感じがします。

かほりさん:テーブルや椅子も古いものが雰囲気を作り出してくれていますね。引き継いだ時にはものが多くて、今よりちょっとごちゃっとしていました。ものが片付いたらお客さんに「壁新しくしたの?」って言われたりして。(笑)

かほりさん:学生の頃から、お店を引き継いだら、ギャラリーにもしたいなと思っていて、自分の趣味で絵を飾ったりはしています。絵をゆっくり眺めながら、日常から少し離れた時間を味わってもらえたらと思っています。

2026年は、GW明けと11月に作家さんの個展も開かれるそうで、白い壁に絵が並ぶ予定です

かほりさん:あとは、父がランプが好きで、ランプがを飾れるお店がコンセプトだったんです。昔、お店にあったマッチもランプの絵が描いてあるんです。

店内にはランプが灯っています
昔はお店においてあったマッチ箱

かほりさん:それから、BGMがないのも特徴のひとつかもしれません。豆をひく音や、お湯が沸く音がBGMになっていて、音楽が流れていないことが落ち着くと言ってくださる方もいます。

お店の中には本も置いてありました。ゆっくり眺めるだけでも楽しめそうなラインナップ

地元を愛し愛される立吉。この場所を守り続けてきたお父様の心意気と、かほりさんの穏やかな笑顔が、店内の心地良さを作り出しています。

最近では外国からのお客さまも増えているそうで、取材中もスペインから来日した男性が来店していました。1年前に立吉でコーヒーを飲み、お父様と話したことが懐かしく、今年も足を運んでみたとのこと。

かほりさんに、これからの立吉について聞いてみました。

編集部:個展を開催したり、お店の空間作りをすることで、お父様のカラーからかほりさんのカラーへとグラデーションに変化している時期かと思います。かほりさんにとって立吉はどんな場所でありたいと考えていますか。

かほりさん:立吉に限らずですが、喫茶店って老若男女誰もが入りやすい場所だと思うんです。子どもが大人と一緒に来て、ちょっとちゃんとしなきゃって気持ちになったり、相手や自分とゆっくり向き合える場所であればいいなと思っています。私、日本にある喫茶店を文化遺産にしたいなと思っているんですよ。

以前、フランスへ行っていた経験もあるかほりさんは、日本の喫茶店の良さを守りたい、この空間を無くしたくない、との気持ちで立吉を営んでいます。お店を引き継いだばかりの頃は「ひとりぼっち感もあったんです」といいますが、今は立吉を軸に世界が広がり、かほりさんらしい立吉へと進化中です。

受け継がれる味は吉祥寺の味としても守り続けたい逸品です。

立吉オリジナルブレンドのお豆も購入できるので、珈琲好きの方、喫茶店好きの方はもちろん、店内の雰囲気を味わいたい方も、ぜひ足を運んでみてくださいね。

立吉から週きち読者のみなさんへ

ランプの光に包まれる店内は、昼から夜にかけて少しずつ表情を変えていきます。

西陽が差し込む時間帯には、漆喰の壁に映る光が印象的です。

音楽のない空間で、豆を挽く音やお湯の沸く気配を感じながら、

珈琲とともにその移ろいを体感していただけたら嬉しいです。

【写真=編集部撮影】

珈琲 立吉

  • 営業時間
    12:00 〜 19:00 (L.O 18:30)
    定休日
    火、水曜 
    メモ
    支払いは現金のみ
  • 電話
    住所

    〒180-0003 東京都武蔵野市吉祥寺南町1-15-5

    吉祥寺駅南口から徒歩約5分

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