アンジェリカで映画の話を

アンジェリカで映画の話を

毎月第2週にお届けする「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。

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アンジェリカで映画の話を 〜『センチメンタル・バリュー』〜

「週刊きちじょうじ」と「週刊きちじょうじオンライン」で毎月第2週にお届けする「ANGELIKAで映画の話を」。「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。

ANGELIKAは吉祥寺・中道通り近くに位置するこだわりのコーヒーとワイン、エッグタルトを提供するお店。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。

『センチメンタル・バリュー』

「これは、あなたの物語よ」

『センチメンタル・バリュー』
監督:ヨアキム・トリアー
2025年/ノルウェー
出演:レナーテ・レインスヴェ、ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテル・リッレオース、エル・ファニング
2026年2月20日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷、アップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー

公式ウェブサイト

女優として活躍する娘の前に、家族を捨てた映画監督の⽗が現れ、新作映画の主演を依頼します。でも、娘は拒絶。「一緒に仕事するなんて無理」。愛憎入り混じる娘と父の関係を描く映画です。

本作の重要なモチーフは、家族が暮らしてきた「家」。家には、家族のさまざまな出来事が刻まれ、感情が沁み込み、語られなかった秘密が潜んでいます。久しぶりにその家で時を過ごす娘と父は、かつてそこに生きていた過去の自分と向き合い、壁のひび割れのように、知らぬ間に生じていた家族の歪みに気づきます。同じ痛みを持ちながら姉とは違う人生を選んだ妹や、家族の気配がしない人気絶頂の女優を登場させることで、家族の物語に奥行きをもたらします。

父は、自ら書いた脚本の中に、娘へ伝えたい想いを静かに忍ばせ、娘は、役を演じながら、自分をさらけ出す姿を父に観てもらいたいと願う。距離がありながら実は似た者同士のふたりが辿り着くラストを、私は、これ以上ないハッピーエンドだと思いました。

『センチメンタル・バリュー』2025年/ノルウェー/監督:ヨアキム・トリアー/出演:レナーテ・レインスヴェ、ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテル・リッレオース、エル・ファニング 配給:NOROSHI ギャガ © 2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINÉMA / FILM I VÄST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE 2月20日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷、アップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー

『センチメンタル・バリュー』を観たあとは、この映画がおすすめ!『ペイン・アンド・グローリー』


『ペイン・アンド・グローリー』
2019年/スペイン/監督・脚本:ペドロ・アルモドバル/出演:アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルス
Blu-ray発売中 Blu-ray:5,280円(税込) 発売元:キノフィルムズ/木下グループ 販売元:キングレコード ©El Deseo.

『ペイン・アンド・グローリー』
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
2019年/スペイン
出演:アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルス
Blu-ray発売中
Blu-ray:5,280円(税込) 
発売元:キノフィルムズ/木下グループ
販売元:キングレコード
©El Deseo.

公式ウェブサイト

本作を観たあとにすぐ思い出した映画です。スペインの監督ペドロ・アルモドバルの半自伝的な作品で、主人公は、しばらく新作を出せずにいる映画監督。しかし、代表作の回顧上映が思わぬ人との再会のきっかけとなり、彼は創作意欲を取り戻します。そして、久々に発表した戯曲もまた、思いがけない再会をいくつも導き、彼は、過去の自分と向き合うことになるのです。

「私は、自分の映画と、30年もの時をかけてやっと和解できた」という台詞が出てきます。人生も、そういうものです。過去の出来事や自らの選択に対して、時が経ったからこそ、決着したり納得できたりするのです。そして彼は、自分が母の死を克服していないことに気づきます。でも、今なら母を描けるかもしれない…。

『センチメンタル・バリュー』では、映画監督の父が娘を描く映画の完成を目指し、本作『ペイン・アンド・グローリー』では、主人公が母を描く映画を生み出そうとします。彼らは映画を完成させることができるだろうか? 両作の結末をぜひ見届けて、見比べて味わってほしいです。