「生きやすさの原点」を見つめて。なないろのおと「カミングアウトジャーニー」上映会&座談会を10月22日に開催。

同じ学校に子どもが通う保護者同士、また地域の活動を通して知り合った市民のつながりから生まれた、学びと対話のサークル「なないろのおと」さんが、初めての映画上映&座談会を開催します。上映するのは映画「カミングアウトジャーニー」(山後勝英監督作品)。当日は、この映画の主演を務める福正大輔さんが、ゲストスピーカーとして登壇します。

映画は、舞台演出家の福正大輔さんが3つのカミングアウトをする旅に出る様子を記録したドキュメンタリー映画です。昨年2022年夏に撮影されました。

  • ゲイであること
  • 薬物依存症が原因で逮捕歴があること
  • HIV陽性であること

2011年9月、武蔵野市の小学校で働いていた福正さんは、覚醒剤取締法違反の罪に問われ逮捕されました。執行猶予3年の有罪判決確定後は治療に努め、依存症から回復(中)。現在は、介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・公認心理師の4つの資格を持ち、依存症地域生活指導者(薬物)やASK認定依存症予防教育アドバイザー等も務めています。

そんな福正さんがカミングアウトして回るのは、友人や職場の上司、そして家族です。カミングアウトをすることで離れていく人もいる。福正さんの「生きづらさ」を支え、愛してくれる人たちと向き合うドキュメンタリー映画です。

一番感じてほしいのは「生きやすさの原点」

テーマからはLGBTQがメインだと受け取られがち。ですが、今回の上映の意図も、団体の活動の意図もそれだけではないと言います。では、どうして今回この映画をチョイスしたのでしょうか。

今回の上映会を主催する「なないろのおと」のメンバー、藤田さんが初めに感じたのは、テーマが重いところでした。

「正直見る前は怖いなという気持ちになりました。でも、カミングアウトする側と、それを受け取る側の信頼関係を通じて、その人らしさが見えてくるのがこの映画の素晴らしいところなんです。元々の信頼関係があるからこそカミングアウトができて、だからこそ人間関係が深まる。ひとりの人間である福正さんがどう人間関係を築いていたかが見えてくる」。

「なないろのおと」を主宰する西山さんは、こう語ります。

「今回の映画で考えてほしいのは、多様性や障害と一括りにラベリングするのではなく、等身大でありのまま見る、ということなんです。依存症が治らないと思っている人は多いけれど、福正さんは依存症を乗り越えた。いろいろな先入観やバイアスを乗り越えて、人とつながる素晴らしさを実感してほしいんです」。

コロナ禍で変化した生きづらさと、合理的配慮の先に見えてくる未来の日常

西山さんは、実は聴覚障害者。発話や音を直接聞き取るのが困難です。コロナ禍を経てこの2〜3年で、自身を取り巻く大きな変化があったといいます。たとえばスマートフォンやリモート会議ソフトに、音声認識ツールが搭載されたこと。

「前職では、10人とか20人がいる会議で、喋っている人の口元を読みながら必死に話題についていっていました。今はLINEもあるし、音声認識アプリを併用して会議に参加できる時代になりました。すごくうれしくて。複数の人との話し合いにもスムーズに入れるようになり、市民活動への原動力にもなったかもしれません」。

一方で、コロナ禍で辛いこともあったという西山さん。口の動きを見て話を理解する読唇術なので、マスクをしていると何を相手が喋っているのか分からないのです。

「レジ袋いりますか?の一言がわからないんですよね。Twitterで聴覚障害者の悩みを拡散してくれた人がいて、だいぶ状況が変わりました。今は医療関係者や銀行の人でも、直接呼びにきてくれる人が増えた。ちょっとした配慮でありがたいと感じます」。

来年4月には民間事業者でも義務化される合理的配慮。「合理的配慮が当たり前になってほしい」という当事者もいれば「合理的配慮だけれど、ありがたい」という人もいる。反対に「申し訳ない」と思う人もいるかもしれません。人それぞれで、必要な配慮も多様です。受け取る気持ちだって異なります。

「私は聴覚障害者ですが、この活動をするまで、視覚障害者の人は写真に代替テキストをつけてもらわないと内容が伝わらないことに思い至っていませんでした。ある障害の当事者だからといって、他の障害が分かるわけではない。そんな、ちょっと考えれば分かることが当事者だってわからない。ちょっとしたきっかけや踏み込みが必要なんです。隣にいて会話をして初めて分かることがあるんです」。

同じ学校に通っている子どもの親同士から始まった「なないろのおと」

藤田さんが、西山さんを知ったのは、西山さんの子どもと同じ学校に通う自分の子どもからだったと言います。そこから、いろいろな取組をしている保護者同士がつながって「なないろのおと」になりました。

「子どもが、友達のお母さんが聴覚障害があって、マスクで大変なんだって、というのを初めに聞いて。LINEでつながったら、すごい饒舌な方だったんで、びっくりしたんです。聞き取れないからって、喋らないわけじゃないのに、どこか先入観でそう思っていたところがある。XX障害の人ってラベリングをしがちだけれど、本人と会うと認識が変わるんです。今回の上映会でも、福正さん本人と会えるので、〇〇の福正さんではなく、福正さんだ、になる。」

「カミングアウトジャーニー」を見て感想を語り合いたいという人たちとLINEグループを作ったところから「なないろのおと」がスタートしました。

「もともと子どもの学校や地域の活動を通して知り合ったメンバーです。それぞれの専門や関心のあるテーマを持ち寄って、知識を共有する場を作れたらといいなと。現在は、おすすめの本や映画を紹介し合うなど、ゆるやかに進めています」。

いろいろな人に会って対話をしていくと、人によってどこまで踏み込んでほしいか、どうしたらお互いに気持ちよく一緒にいられるか、面白くなるのかが見えてくると西山さんはいいます。

「聞こえないことを話す授業を、小学校でしていたことがあるんです。子どもに、失礼だと思う質問も言っていいんだよって伝えても、凄く気を使っている、考えて質問をするのが伝わってくる。踏み込んじゃいけないって思うんだな、とそこで実感しました。それが、あえて前に出ようと思ったというのはあるかもしれない。もちろんそれは人によります。みんながそうではない。私は、分かってもらいたいとまでは思わないけど、聞きたければ話すよという感覚なんです」。

踏み込んだ先に起きる変化を楽しみたい

踏み込んだ先の日常に、起きる変化があったと藤田さんはいいます。それは「なないろのおと」を立ち上げる少し前、刑務所が舞台のドキュメンタリー映画「プリズン・サークル」の上映会が地域のコミュニティーセンターで開催されると聞いたときのこと。「字幕がないとみられないんだよね」と話す西山さんのために、上映会の主催者がコミュニティセンターで上映会をしたときに字幕をいれてくれたのだそう。

「プリズン・サークルは何度か見たことがあるんですが、映像と音声に加えて字幕が入ったことで、より理解が深まった。私にとっての情報量も増えたんだと思ったんです。ちなみにその上映会の主催者の方も、なないろのおとに入ってくれています(笑)」。

誰かのための配慮が、実はみんなにとっての不便を解消するかもしれない。ユニバーサルデザインの可能性や多様性と暮らす日常がポジティブに見えてきたといいます。

聞けないと思うことを、あえて聞き、ハードルを乗り越えた先に何が待っているのか。隣にいる人の多様性をどう共有し、人生を楽しむか。当日は福正さんの人柄もあり、笑いに包まれた楽しい会となりそうです。

上映は10月22日(日曜日)10時から。会場は武蔵野プレイス4階フォーラムで。上映には日本語字幕が付きます。

参加申し込み

最新情報は「なないろのおと」さんのTwitterでご確認ください。

なないろのおとTwitter QRコード

映画『カミングアウトジャーニー』上映会&座談会

友人、職場、家族へカミングアウトする旅に出る。中野からはじまり川崎、そして広島へ。20代、30代は薬物とアルコール、セックスに依存し続けていた僕が40代になって得た境地とは。自身のセクシュアリティのこと、HIVのこと、依存症のこと。すべてをさらけ出す旅はどこへ向かうのか。本音がいえずに社会からはじき出され、つまづき、いま悩んでいる人にこそ観てほしいドキュメンタリー映画。

  • 開催日
    10月22日(日曜日)
    時間
    10時〜12時(開場:9時45分)
  • 料金など
    無料
    お問い合わせ
    7ironooto@gmail.com
    会場

    ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイス

    〒180-0023 東京都武蔵野市境南町2丁目3−18

  • 出演
    福正大輔
    プログラム
    定員100名 日本語字幕付き 後援:武蔵野市教育委員会
  • 主催
    なないろのおと
    Twitter