#吉祥寺で本と出会う

#吉祥寺で本と出会う

絵本専門の古本屋さんのいち推しクリスマス絵本をご紹介!MAINTENT(メインテント)インテビューvol.1【#吉祥寺で本と出会う】

その看板は、吉祥寺東急百貨店の横にある路地の入り口に佇んでいます。

年季を感じさせる木の風合い。趣のある手書きの文字。そして、こっちだよと呼びかける指。

看板の通り、100m歩くと辿り着くのは……………

不思議な絵本の世界!!!

お店の名前は「MAINTENT」(メインテント)。8年前、吉祥寺にオープンした絵本専門の古書店です。

入り口では、クリスマスの絵本とともに、看板ライオンのライオネル&リッチーがお出迎え!

中に入ると絵本がいっぱい!!国内外問わず、元の持ち主さんから託された絵本が5,000冊以上あるのだとか。

今回はそんなMAINTENTのオーナー、絵本蒐集家フランソワ・バチスト氏に絵本について2回に分けてお話を伺います。

第1回目のテーマは、クリスマスに伝えたい絵本!

絵本蒐集家フランソワ・バチスト氏。なんだかちょっとミステリアス。絵本に関して分からないことがあると、詳しく教えてくれます。

【手に入りにくいけど伝えたい】メキシコのクリスマスのお話

最初に紹介する絵本はこちら!

『クリスマスまであと九日 セシとポサダの日』

マリー・ホール・エッツ (作・画),アウロラ・ラバスティダ (作),たなべ いすず (訳)

このお話は、メキシコの小さな女の子セシが、成長して初めてクリスマス前に行われる特別なお祭り”ポサダ”をしてもらえるようになったところから始まります。セシは初めてのポサダ胸をときめかせ、当日を今か今かとまちわびます。

そして、ポサダに欠かせないのがピニャタ!

ピニャタとは、素焼きのつぼにお菓子やくだものを入れて、色紙を切ってつぼに貼り付け動物や人の形に飾ったもの。表紙に見える子どもたちの頭上で一際明るく輝く星形のものが、セシが市場で大小様々なピニャタの中から選んだ、とっておきのピニャタです。

何冊もの絵本を蒐集してきたバチスト氏が「すごく大好きで、娘の名前はこの絵本から取った」と語る一冊。あたたかな暖色の色使いと、柔らかな描写でポサダ前のワクワクとポサダ当日の様子が描かれています。

しかしこの絵本、現在は版元品切れ中なのだとか。もし、どこかの店頭で見かけたらかなりラッキーかもしれません!

MAINTENTにあったのは、英語版!タイトル部分のデザインが変わるだけで、少し印象も変わります。

【クリスマスのプレゼントは?】今なお受け継がれる子うさぎの絵本

次に紹介するのはこの絵本!

『子うさぎましろのお話』

 佐々木 たづ (著), 三好 碩也 (イラスト)

1970年に初版が出た絵本ですが、こちらは今なお発売中!

お話の主人公は白うさぎの子”ましろ”。クリスマスが訪れ、サンタ=クロースのおじいさんからおくりものをもらったものの、もらったお菓子をぺろっと食べると、もっと何か欲しくなってしまいました。そこで、“ましろ”はすみを使って体を黒く塗ることでもう一回プレゼントをもらえないかと考えます。そうして体が黒くなった”ましろ”を見て、サンタさんは小さな「たね」を一つくれました。けれど、お家に帰ろうとすると、なんと体の黒色が取れません。”ましろ”は一体どうなってしまうのか?そして、サンタさんからもらった種は、なんの種なのか?読めば心が温かくなるお話です。

「こちらも非常に良いクリスマスの絵本」だとバチスト氏はおすすめしてくれました。

佐々木たづさんの心地の良い文章と、三好碩也さんのあたたかなイラストが、サンタさんの優しさと“ましろ”の感情、冬の雪山の美しい様子を伝えます。

【大人のプレゼントにも】見えないものを見られる絵本

最後の絵本は、糸で平綴じされ、透明のカバーがかけられた特殊な装丁のこちら!

『雪がふっている』 

レミー・シャーリップ(作),青木恵都(訳),セキユリヲ(装丁・デザイン)

こちらの絵本はクリスマスのお話ではありませんが、クリスマスプレゼントに買っていかれる方が多いといいます。

表紙を開くとそこには、真っ白いページと「見てごらん 雪がふっている」の一文が。その後も、白いページと雪景色の描写が続きます。

最後までページは全てまっしろ。果たしてこれはただの白いページなのでしょうか?

いいえ!語感のリズムに身を任せるうちに、あっという間に雪景色へと誘われていきます。

実はこの絵本、他の壁面の絵本たちと比べると、かなり小ぶり。シンプルな白い表紙が目を惹きます。

この絵本を手がけたのはタムラ堂。全てハンドメイドで一冊ずつ作成された、インドの絵本『夜の木』で有名な出版社です。

『雪がふっている』のデザインは、フランス語版が由来。田村さんがフランスで見つけ、是非日本でもと同じようなデザインで発行したのだとか。

唯一無二の素敵すぎる絵本を出版するタムラ堂の『雪がふっている』。書店の絵本コーナーでは見かけることが少なくても、MAINTENTならば出会えます!!ぜひ手に取って、美しい雪の世界を体験してみてください!

クリスマスの絵本はまだまだ沢山!そこで、その一部を写真で紹介。(あれ?一冊サンタに見えて、全然関係のない本が……!)

【豆知識】バチスト氏おすすめ!場所を取らないツリーの飾り方

絵本の中には、サンタやクリスマスツリーの絵がなくてもクリスマスを描いたものが多くあります。

けれど、実はツリーが描かれている絵本には読む以外の楽しみ方があるんです!

それは、ブックスタンドに立ててクリスマスツリーとして飾ること!

場所がなくてクリスマスツリーが置けない一人暮らしの方にも、かさばるツリーの代わりにおすすめです!しかも、クリスマス以外は本棚にしまえて片付けいらず。素晴らしい!!

バチスト氏からおすすめされ、思わず「おぉー!」と感嘆の声をあげてしまったこちらの方法、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?

絵本との出会いは一期一会!?

さて、ここまで様々な絵本を教えてもらいましたが、今回お話を聞くうちに知ったのが、絶版や重版のかからない絵本の多さです。

初めに紹介した、『クリスマスまであと九日 セシとポサダの日』も重版がかからない一冊。「毎年何十冊と頼んでいるけど全然重版されないので、重版はかからないかな」とバチスト氏は悲しげに語ります。

そもそも絵本は重版がかかることが珍しく、初めに多めに出てほとんどは、初版で終わってしまうのだとか。さらに、今は材料費が上がり殊更重版がかかりにくい時代になってしまったといいます。

バチスト氏が後世に伝えたい絵本と名前をあげる一冊。これも絶版になってしまった。文字数が多くて、派手でない絵本は手に取られにくく、絶版になりやすいといいます。

また、ある程度売れて重版がかかると、今度は用紙の問題が出てくるそうです。

重版をかけようとした時には、最初に使っていた紙が廃盤。そうすると、他の紙を使うことに。

子ども頃読んでいたお気に入りの絵本を、大人になってから本屋で手に取ると…「なんか違う」となることありませんか? それは紙が原因かもしれません。特に、絵本についている紙のカバーが、落ち着いたマット紙からツルツルの光沢紙に変更されるとかなり印象が変わります。

時を経るごとに、変わりゆく絵本たち。

私たちと絵本の出会いは、想像以上に一期一会なのかもしれません。

こちらも後世に伝えたい一冊ながら絶版に。「はるになったら」というタイトルで、翻訳もし直され、紙も別のもので再出版されましたが、それも絶版になり入手困難です。

ところで、先ほど出てきた絵本についている紙のカバー。

外国で出版される絵本では、ない方が普通なことを知っていましたか?

第2回では絵本蒐集家フランソワ・バチスト氏に外国の絵本について伺います!(MAINTENTにある5,000冊のうち約半分は外国の絵本だそうです!)

近日公開予定!お楽しみに!

(追記:第2回更新されました!)