バー初心者にもおすすめしたい!吉祥寺のジャズバー「アウトバック(OUTBACK)」で特別な時間を

みなさんはバーに行ったことはありますか? 普段とは違う雰囲気の中で、ゆっくりとお酒を楽しめるバーの空間は、特別な時間を味わえる場所ですよね! 私もバーに行くと、少し大人になったような気がして(すでに十分大人ですが…笑)、なんだか嬉しくなります。
とはいえ、「どう注文したらいいのかわからない」「値段が見えなくて不安」といった理由で、バーへ一歩踏み出せない方もいるのではないでしょうか。そんなバー初心者にもおすすめしたいのが、吉祥寺のジャズバー「アウトバック(OUTBACK)」です。今回、アウトバックの店長・菅野さんに、お店の歴史やバーでの楽しみ方についてうかがってきました。


「この空間は財産。」当時の面影を残す、アウトバックの歴史。

ジャズバー・アウトバックは吉祥寺大正通り沿いにある地下のお店です。人通りの多い場所ですが、地下へ続く階段を降りていくと、まるで別世界にワープしたような感覚に包まれます。店内中央には珍しい楕円形のカウンターがあり、地下とは思えない開放的な吹き抜けの空間に思わず驚かされます。アウトバックの歴史について菅野さんにお話をうかがいました。

「アウトバックは1972年に創業しましたが、現在の場所に移ったのは1986年です。現在、姉妹店の『Maru』がある場所でジャズ喫茶としてスタートしました。私は1991年の3月にアルバイトとしてこの店に入り、一度退職しましたが2008年に戻ってきました。この仕事をはじめた当時はウイスキーブームで、バーボン専門店で働いていたんです。カクテルの作り方などはアウトバックで学びましたね。」

今回お話をうかがったアウトバック・店長の菅野さん

オープンした半年後に改装し、今のアウトバックの形になったと話す菅野さん。現在は吹き抜け部分となっている2階にはお客さんは入れませんが、かつてはワインを提供する場として使用されていたそうです。心地よいジャズを鳴らすスピーカーも当時のまま。

「現在、店内のスピーカーはカウンターの左右に設置されていますが、オープン当初は板に取り付けられた状態でカウンターの真上にあったようです」と菅野さん。

アウトバックを手がけたのは、週きちでも以前紹介した「SOMETIME(サムタイム)」を創業した野口伊織1さん。店内の設計は吉本デザイン事務所が担当しました。同事務所のウェブサイトには、移転当時の写真が紹介されています。

「生前、野口伊織が手がけた店は少しずつ減ってきています。当時の雰囲気を残しているのは、サムタイムとここぐらいですね。アウトバックは多少のマイナーチェンジはしていますが、ほぼ当時のままです。手前味噌ですが、会社にとっての遺産ともいえる場所だと思っています。最近では、修繕が必要な部分を当時の形をできるだけ残す方向で進めたいと思うようになりました。自分より後の世代にこの場所が残るといいなと思います」と語ってくれました。

アウトバックならではの特別な空間を守り続けながら仕事をする菅野さん。このようなお店が街の魅力を作り上げているのだなと感じました。

  1. 野口伊織:1942年、東京生まれ。1966年にジャズ喫茶「Funky」をプロデュースしたのを皮切りに、吉祥寺を中心にさまざまなジャンルの店舗を30軒以上手がけた。2001年、脳腫瘍のため58歳で逝去。 ↩︎


アウトバックの由来。“新しい”ジャズを聴くためのバーだった!

淡く、落ち着いた独特なブルーの色合いに記された“OUTBACK”の文字。そのロゴデザインもとてもおしゃれです。店名の由来についてうかがいました。

「先ほど話に挙がった野口伊織氏は『Funky』というジャズ喫茶を手がけていました。Funkyはスタンダードなジャズを楽しめるお店として作られましたが、時代が進むとフュージョンなどの新しいジャズの流れが生まれてきました。アウトバックは、まさにその新しいジャズを楽しむ場所として作られたんです。店名はその象徴的なアルバム『Outback(1972)』から取ったそうです。当時はバーでジャズを聞くのが主な目的だったんですね。」

ジャズのジャンルに合わせてお店が作られたなんて、なんて贅沢なエピソード! 当時はFunkyの後にアウトバックを訪れるお客さんもいたそうです。おしゃれなハシゴですよね! また、こだわりのスピーカーを目当てに訪れる方も多かったとか。

現在のアウトバックでは、ジャンルにとらわれずジャズを楽しむことができます。創業から変わらないスピーカーから流れるジャズに耳を傾ければ、当時の雰囲気をそのまま味わえる貴重な体験ができますよ。

ジャズの名盤が飾られている地下の階段。地下のお店ってワクワクします!
『Outback(1972)』Joe Farrell…シカゴ出身のサックス奏者、ジョー・ファレルの72年作。ベースにバスター・ウィリアムス、ドラムにエルヴィン・ジョーンズ、エレクトリック・ピアノにチック・コリアが参加したジャズの変革期を彩る一枚。


バーで注文するにはどうすればいい?アウトバック的バー入門!

さてさて、気になるのはアウトバックでの楽しみ方。「バーでの頼み方はどうするの?」「お酒の種類がわからない…」など、バー初心者の私が気になるポイントをうかがいました。

その1 まずはメニューから選んでみよう!

お店に入ったら、まず席に通してくれます。バーだとメニューが無い場合がありますが、アウトバックではメニューを出してくれるので、初心者の方でも安心です。

「例えば銀座などほかの街では、バーにメニューがないことがほとんどですが、吉祥寺のバーではメニューがあるお店の方が圧倒的に多いんです。理由はわからないのですが、吉祥寺のバーではメニューがないと成り立たないんですよね。」

バー初心者はメニューの置いてある、吉祥寺でバーデビューするのがいいのかもしれません!

アウトバックの場合、チャージは900円。メニューにはお酒の種類と値段が載っているので安心です

その2 お酒が飲めなくてもバーに入っていいの?

バーの雰囲気を味わいたい、けれどお酒が苦手…。そんな方でもバーに入ってよいのでしょうか?!

「もちろん大丈夫です。ソフトドリンクもありますが、アルコールを使わないカクテルもお作りできます」とのこと。お酒が飲めない方には、カクテルらしい見た目のものや、炭酸が入ったものなど、いくつか好みを伝えれば、それに合わせて作ってくれるそうです!

人生初の“お任せ”で注文したところ、カクテルの王様ともよばれる「マティーニ」を出していただきました!

その3 お店の人に色々聞いてみよう!

菅野さんによると、わからないことがあればお店の方に聞くのが一番だそうです。メニューから選んで頼んでももちろんよいですが、お店の人にどんなお酒があるのか聞いてみるのもおすすめです!

「ちょっと知ったかぶりしちゃって、頼んだお酒が実は高いお酒だったなんてことも(笑)。ですので、色々聞いちゃうのが一番です」と菅野さん。ちょっと勇気がいりますが、質問するのは大歓迎とのこと。若いお客さんの中には、インスタグラムを見せて「このお酒が飲みたい」と頼む方もいるとか。

「メニューはあるのですが、例えば『これってどういうお酒ですか?』とか、『こういうのが飲みたい』と伝えると、自分の好みに近づきやすくなりますよね。最初は緊張するかもしれませんが、二言三言話せば緊張もほぐれると思います。いろいろ聞いてもらえると、もっと楽しくなりますよ」と笑顔で教えてくれました。

最近では若い方々も多く訪れるようになったと菅野さん。実は、アウトバックに通っていた方々の子ども世代のお客さんも来店しているそうです。さらに、アウトバックで働いているスタッフの中には、親が当時アウトバックに通っていた方もいるとか!

世代を超えて愛され続けているジャズバー・アウトバック。歴史の重みを感じつつも、どこか新しさも漂うその空間に、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか?

20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。