アンジェリカで映画の話を
毎月第2週にお届けする「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。
アンジェリカで映画の話を 〜『オークション 〜盗まれたエゴン・シーレ』
「週刊きちじょうじ」と「週刊きちじょうじオンライン」で毎月第2週にお届けする「ANGELIKAで映画の話を」。「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。
ANGELIKAは吉祥寺・中道通り近くに位置するこだわりのコーヒーとワイン、エッグタルトを提供するお店。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。
『オークション 〜盗まれたエゴン・シーレ』
これは贋作ではない。命にかえて本物です。
『オークション 〜盗まれたエゴン・シーレ』
監督・脚本・翻案・台詞:パスカル・ボニゼール
2023年/フランス
Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国ロードショー
公式ウェブサイト
エゴン・シーレの名画「ひまわり」を巡り、美術オークションの世界で繰り広げられる駆け引きを実話をもとに描く映画です。
100年の時を経て奇跡的に発見された名画にまつわる謎は、さまざまな憶測や探り合いを経て、映画の中盤で明らかになります。その過程が興味深いのですが、この映画の肝はこの先から!名画を取り巻く登場人物たちの秘密や嘘や本性が明らかになっていくのが面白い!
敏腕競売人アンドレの人物描写が秀逸です。知識と経験と鑑識眼に絶対の自信があり、アートをビジネスにするアンドレ。そんな彼が名画「ひまわり」に導かれて出会ったのが、名画の偶然の持ち主だった夜勤労働者の青年マルタン。アンドレはマルタンのためにも値を上げようとオークションで交渉術を発揮しますが、果たして勤勉で純朴なマルタンの反応は? 映画のラスト、マルタンからアンドレへの手紙の内容が心にしみます。
『オークション 〜盗まれたエゴン・シーレ』を観たあとは、この映画がおすすめ!『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』
『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』
監督:クラウス・ハロ
2018年/フィンランド
『オークション 〜盗まれたエゴン・シーレ』のあとに、ぜひ、続けて観てほしい映画をご紹介します。『オークション~』のアンドレは、パリの大手オークション・ハウスで仕事をする華やかな美術業界人ですが、本作の主人公オラヴィは、ヘルシンキの片隅でひっそりと小さな美術店を経営する老美術商。商売が思うようにいかず、引退を考え始めたオラヴィは「あと一度でいい、名画にかかわりたい」と仲間につぶやきます。同じ美術業界を描いた映画でも、本作は何とも素朴。ですが、オラヴィの絵画に対する情熱に満ち溢れています。
オラヴィがオークションで一枚の肖像画に目を奪われ、長年の経験から価値ある作品だと確信したところから、本作は一気にその情熱が加速します。肖像画には署名がない。作者は誰なのか。本当に名画なのか。オラヴィは、孫のオットーという有能な助手を得て、引退間際、それまでの人生のすべてをかけた大勝負を始めるのです。
フィンランドの美しい街並みも見どころの、大好きな映画です。