街々書林の今月の旅する1冊

街々書林の今月の旅する1冊

吉祥寺中道通りに位置する「街々書林 Books & Gallery」の店主であり、旅に関する本を執筆してきた「旅行作家」でもある、小柳淳さんによる月イチの連載コラムです。本の世界の「旅」を、どうぞお楽しみください。

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すごい長崎 日本を創った「辺境」の秘密 〜街々書林の今月の旅する1冊

「週刊きちじょうじ」と「週刊きちじょうじオンライン」で毎月第1週にお届けしている「街々書林の今月の旅する1冊」。 「街々書林 Books & Gallery」は、旅にまつわる本や雑誌、雑貨を販売しているユニークな書店。吉祥寺中道通りに位置しています。街々書林の店主であり旅に関する本を執筆してきた「旅行作家」でもある、小柳淳さんによる月イチの連載コラム、本の世界の「旅」をどうぞお楽しみください。

すごい長崎 日本を創った「辺境」の秘密

すごい長崎 日本を創った「辺境」の秘密
下妻みどり 著
新潮社
価格:1,980円
発売日:2025年1月29日
ページ数:224ページ
書籍詳細

長崎といえば、出島、カクレキリシタン、造船そして原爆などが思い浮かびます。ほとんど無名の深い入り江であった長崎の地に、戦国末期ごろ平戸から対外貿易窓口が移ります。そこから始まる長崎の歴史を、外国貿易の始まりやそれに関与した大名や幕府、キリスト教の受容と禁教、幕末から明治の近代産業勃興、戦争と原爆そして戦後の現代へと叙述してゆきます。戦後は有名な軍艦島をはじめ炭鉱がいくつも活況を呈します。長崎経済の隆盛にともなって長崎を題材にした歌謡曲が次々生まれ、美輪明宏、さだまさし、福山雅治など長崎生まれの歌手の活躍したことが描かれます。

市内を流れる中島川にかかる眼鏡橋(撮影=小柳淳)

南蛮貿易などといわれる、ポルトガルやオランダとの交易や長崎出島の成立、そしてキリスト教禁教に連動する島原の乱などについても資料を踏まえたうえで、現場の地形や風景を丁寧に紹介して書かれています。貿易は南蛮相手だけではなく、明・清といわれた中国大陸とも続いていました。そのようにして日本人とヨーロッパ人、華人が交錯してできあがった長崎の祭り、宗教、食、建築、橋などに記述は広がってゆきます。

このように多彩な歴史の蓄積がある長崎ですが、文章は平易で読みやすく、まるで長崎の街を一緒に歩いているような気もしてきます。それは歴史の話でありながら、街歩きの要素が加味されているからでしょう。著者の手による多数のイラストがあるのも、読みやすさわかりやすさを助けています。

長崎港外の伊王島にあるカトリック教会(撮影=小柳淳)

街々書林 Books & Gallery

2023年6月、吉祥寺の中道通りにオープンした書店。「旅する本屋」を掲げ、旅に関する本や雑誌、雑貨を販売。店内奥には貸ギャラリーも。