吉祥寺村立雑学大学
2090回(2021/09/04)雑大レポート『源氏物語 宇治十帖の女達 その二』
====== 本記事は、雑学大学に参加された方によるレポート記事です ======
立ち寄らむ かげと頼みし 椎本
空しき床に なりにけるかな
二月二十日頃 匂宮は初瀬詣での帰途、八の宮邸の対岸にある夕霧の別邸で中宿りした。
薫から耳にした、八の宮の姫君達への深い関心からである。
薫を始め 若い貴公子達もこぞって迎えに上がり、賑やかな管弦の遊びに興じた。
八の宮は川波を隔てて聞く管弦の音色に、昔日の栄華を偲ぶのであった。
翌朝、八の宮から薫の下へ文が贈られてくると、匂宮は、自らその返事を書き留めたのである。
その後、匂宮の姫君宛の文がしばしば贈られてきたが、八の宮はその返事を中の君に託したのであった。
今年、重い厄年に当たる八の宮は、健康もすぐれず、死の近い事を覚悟するが、常に、気掛かりだったのは、婚期を過ぎた姫君達の将来であった。七月、中納言となった薫は久し振りに宇治を訪問したが、八の宮は姫君達の将来を、すべて薫に託した。
死期の迫った八の宮は姫君達に「くれぐれも親の面目をつぶすような結婚はしてはならぬ。なまじこの山里を離れてはならぬ」と戒め、宇治の山寺に籠り、その後しばらくして、寂しく息をひきとったのである。 ―以上―
(文責 藤井悦子)