佐野洋子さんをご存知ですか？ 『100万回生きたねこ』の作者として有名な絵本作家さんですが、佐野さんの死生観が印象的なエッセイも書かれており、子どもから大人まで幅広い層にメッセージを届けている方ですよね。

そんな佐野洋子さんのエッセイをモチーフにして生まれた演劇『ヨーコさん』が吉祥寺シアターにて2023年8月26日（土）から9月3日（日）まで上演されます！

『ヨーコさん』の死生観に迫る、演劇集団円 9年ぶりの新作

演劇集団円によって上演される『ヨーコさん』は劇作家の角ひろみさんによる新作。新作の登場は2014年に円へ書き下ろした『囁谷シルバー男声合唱団』（第59回岸田國士戯曲賞最終候補）以来9年ぶりとなります。

2023年に刊行45周年を迎える『100万回生きたねこ』がよく知られている佐野洋子さんですが、実は演劇集団円の児童劇「円・こどもステージ」に書き下ろしの作品を提供したこともある、円と縁のある作家さんなんです。そんな佐野さんのエッセイをモチーフとして、角ひろみさんが製作・演出を担い、円の俳優陣と新たなメッセージを紡ぎだします。

『ヨーコさん』の物語は、死を迎える直前のヨーコさんと、自らの死を受け入れられず彼女に話しかける小さなヨーコの出会いから始まります。ヨーコさんの部屋には息子のケン、父、母、そして兄たちが集まり、過去の時間が巻き戻されます。夕飯の光景や兄妹との触れ合い、母との確執、そして大好きだった兄の死など、ヨーコさんの身体を記憶が通り抜けていきます。愛し憎んだ思い出の人々が出入りしながら、追憶の中で鮮やかに遊び、気づき、許しを覚えていくヨーコさん。死に向かっていくヨーコさんの物語が、音楽が奏でられるように、風景が描かれるように、いつも愛した人々によって紡がれるのです。

そんな新作『ヨーコさん』の上演にあたり「ヨーコさん。洋子さん。佐野洋子さん。惹かれてやまない。円に縁ある人の劇を書きたいと思いました。明るく強く賑やかに描きたいと思いました。」とコメントする角ひろみさん。佐野さんのエッセイ『死ぬ気まんまん』に触発され、ヨーコさんの愛憎や死生観についてもっと知りたいと感じたそうです。上演を通じてその死生観に立ち、不条理な世界を愛せるときめきを掘り起こしたいと語りました。

エッセイの中で死についての問いに、「生きている方がずっと疲れるし、めんどうくさい」と言いながら、死を前に「この世界を愛するために生きていると思う」と答え置く佐野洋子さん。その死生観が劇中でどのように演じだされるのか、ぜひ吉祥寺シアターに足を運び、『ヨーコさん』の物語に身を委ねてみてくださいね。

【8月27日（日）・28日（月）】若手俳優による短編3作品が上演

8月27日（日）・28日（月）の『ヨーコさん』14:00の回の公演終了後、プラスワン企画として、演劇集団円所属の若手俳優による短編3作品が上演されます。

『いまさらキスシーン』

作：中屋敷法仁、出演：古賀ありさ、上野恵佳

『モノローグ作品集「ハザマ」より』
作：渋谷悠、出演：庄司ゆう希

『コント「暗転」』
作：田光葵、出演：石井英明、近松孝丞、平田舞

上演時間は3作品で約60分。プラスワン企画の料金は自由席が1,500円、U-18券が1,000円です。また、『ヨーコさん』のチケットをお持ちの方や円の会支持会員は500円で観劇できます。

演劇集団円とは

演劇集団円は、舞台だけでなくテレビや映画、アフレコなどで活躍する充実した実力派俳優陣で幅広く多様な演劇の制作・上演を行っています。
公演レパートリーも幅広く多様で、ラシーヌやシェイクスピア、エリザベス朝劇などの古典から現代劇まで積極的に取り組んでいます。さらに、「円・こどもステージ」という新しい児童劇の分野も開拓し、良質の戯曲、音楽などが評価され、数多くの賞に選ばれ続けています。
古典から最新作まで柔軟に取り組み、劇的なものを追求しています。