武蔵野市国際オルガンコンクール、第1次予選結果が発表、2次予選を経て週末に本選へ。改めて知る、パイプオルガンの魅力って?
7月の記事でも取り上げましたが、今年の秋、ショパン・コンクールなど世界の名門コンクールが名を連ねる「国際音楽コンクール世界連盟」に加盟する2つのコンクールがここ武蔵野で開催されることをご存知ですか?
この9月には「第9回 武蔵野市国際オルガンコンクール」が、10月には「第13回 国際オーボエコンクール・東京」が武蔵野市民文化会館で開催されるんです。同時期・同会場で2つの国際コンクールが開催されるというのは世界的にも稀有な機会です。アジア初、そして日本で唯一の国際オルガンコンクールである「武蔵野市国際オルガンコンクール」。その魅力に触れてみませんか?
気になる第1次予選の結果、そして2次予選は?
先週末、9月9日・10日に開催された武蔵野市国際オルガンコンクール第1次予選。第2次予選に進む8名のオルガニストと演奏順が発表になりました。第2次予選は、聖グレゴリオの家 宗教音楽研究所(東久留米市)で、9月13日・14日に開催されます。1次予選と2次予選で使う楽器が変わる、というのも見どころのひとつです。
9月13日(水)
1. アンドリュー・ヴァン・ヴァリック(アメリカ)
2. ヨハネス・クラール(ドイツ)
3. 東方 理紗(日本)
4. アナ・マリヤ・クラインツ(スロベニア)
9月14日(木)
5. アレクサンダー・リトル(イギリス)
6. 濱野 芳純(日本)
7. ニクラス・ヤン(ドイツ)
8. ダニエル・ミニック(アメリカ/オーストラリア)
パイプオルガンの魅力を最大限引き出した、オープニングガラ・コンサート、世界で活躍する名手たちが集結
この予選に先行して、武蔵野市国際オルガンコンクールのプレイベントの一つ、オープニングガラコンサートが9月3日18時に開催されました。「ガラ」とは「お祝い、祝祭」などを意味するスペイン語で、豪華な出演者が複数出演するコンサートです。出演したのは、いずれも国内外で活躍するオルガニストたち。山田由希子、冨田一樹、大木麻理、三原麻里、大平健介の四人。
J.S.バッハ縁の地、ライプツィヒで行われているライプツィヒ第20回国際バッハコンクールで第一位と聴衆賞を受賞した冨田一樹、2016年IOニュルンベルク国際オルガンコンクール優勝の大平健介など、世界のトップで活躍するオルガニストの演奏を聴くことができた贅沢なプレイベントになりました。
プログラム
山田由希子
★ブルーンス(1665- 1697)
- 前奏曲とフーガ第1番ホ短調
- いざ来たれ、異教徒の救い主
冨田一樹
★J.S バッハ(1685-1750)
- トッカータ ニ短調 BWV538-1「ドリア旋法」
- いざもろびと、神に感謝せよBWV657
- 心よりわれ汝を愛す、おお主よBWV1115
- ただ愛する神の摂理にまかす者BWV 690
- フーガ ニ短調 BWV538-2 「ドリア旋法」
大木麻理
★レーガー(1873- 1916)
- オルガン・ソナタ第2番ニ短調Op.60より
インプロヴィゼーション
イントロダクションとフーガ
三原麻里
★J.アラン(1911 - 1940)
- 幻想曲第2JA117
★M.デュリュフレ(1902- 1986)
- アランの名による前奏曲とフーガOp.7
大平健介
★藤倉大(1977-)
- ウォーターパース(日本初演)
★K.ヨハンセン(1961-)
- 賛美
今回のガラコンサートは、前半にバッハと同時代のブルーンス、ドイツ・バロックの雄であるバッハから後期ロマン派のレーガーが演奏され、重厚で迫力のあるドイツのオルガン音楽が楽しめました。後半は、フランス近代の作曲家で始まり最後は現代の日本とドイツの作品でした。フランス近代、現代日本の作品は多彩な響きが披露され、オルガンでこんな音が出るのかと思う場面もあったと思います。
武蔵野市民文化会館のパイプオルガンの魅力を最大限楽しめるよう、よく練られていることが伺えます。文化会館小ホールは、オルガンの響きがダイレクトに客席に届くので、オルガンを本格的に味わうのには相応しいホール。荘厳な響き、温もりのある響き、カラフルな響き、日本の藤倉の作品の電子音の響きまで、様々な特色のある音楽を楽しめる素晴らしいコンサートだったといえるでしょう。
あるのは知っているが詳しくは知らない?パイプオルガンの魅力
三鷹から歩いて15分くらい、吉祥寺からはバスで10分くらいの市民文化会館にハイプオルガンがあることは知られていると思うのですが、どんなオルガンなのか具体的なことは意外に知られていないかもしれません。日本ではパイプオルガンと呼ばれることの方が多いですが、 欧米ではオルガンというだけで パイプルガンのことを指すってご存知でしたか?楽器の女王などという愛称もあるくらい親しまれている楽器です。
起源は古く、パイプオルガンと同じ構造の楽器は紀元前から知られています。鞴(ふいご)で複数の管の列に空気を送り、音を出して音楽を演奏するという単純な機構は、機械で空気を送るようになった現代のオルガンも基本は同じ。ちなみにモーターで空気を送ることができるようになる前は、足踏み鞴(ふいご)で何人かの人が空気を送り込んでいました。
ヨーロッパでは、中世に小型のものが少しずつ大型になり、ルネッサンス時代になると一気に発展し大型します。その後は、教会に必須の楽器となり、ヨーロッパの地域ごとの各国で様々な特色を持つオルガンが制作されるようになりました。基本は教会に付属している楽器だったのですが、19世紀になると徐々に教会を離れてコンサートホールでもオルガンが設置されるようになったんですね。現代のオルガンはパイプの数が1万本を超え、鍵盤も5段とペダルという組み合わせの、とても巨大なものもあります!
武蔵野市民会館にオルガンが設置されたのと同じ1980年代初期から日本のコンサートホールでも設置が増え、今はコンサートホールにオルガンがあるホールが増えています。武蔵野市民文化会館のオルガンはデンマークのマルクーセン&ソン社製のオルガンで、1984年に設置され、都内の公立ホールとしては初めてのパイプオルガン設置とのこと。パイプ数は2780本。鍵盤は3段とペダル鍵盤があり、中規模のオルガンということができます。詳しくはURLから武蔵野市民会館のホームページをご覧いただきたいですが、多彩で暖かい音色が特徴の素晴らしいオルガンです。バロックから現代まで様々な音楽が演奏することができます。 面白いのは一番上にある3番目の鍵盤は鍵盤のすぐ上にあるパイプ列と繋がっており、そこの部分の扉が開閉するようになっていて音量の増減を調整するので、見ていると楽しいですよ。
武蔵野市民文化会館のパイプオルガン(武蔵野文化生涯学習事業団公式サイト)
https://www.musashino.or.jp/iocm/1000118.html
昨年には、タイトルが話題になったオルガン解体ショーなど、オルガンに親しむ入門企画も行われています。6年ぶりに武蔵野市で開催される国際オルガンコンクール。ぜひ、これを機にパイプオルガンの素晴らしさを存分に体験してみませんか?
今後の日程・オンライン配信予定
審査員によるガラコンサート12日(火)に開催。9日(土)と10日(日)に行われた第一次予選と、9月13日(水)・14日(木)の第2次予選を通過したファイナリストが、今週末17日の本選で腕を競います。
予選や本選もチケットを購入すれば誰でも聴くことができますが、毎回人気があり完売御礼になることも多い、国際オルガンコンクール。ただ、9月18日(月曜日・祝日)のコンクール入賞者コンサートはまだ買えるようです(10日時点)。なお、今回のコンクールは、YouTubeでも全日程を生配信。第1次予選の模様もアーカイブ配信で楽しめます。
なお第1位入賞者のCD録音が9月19日(火)・20日(水)に行われ、ナクソスレーベルからリリースされます。また、「街かどコンサート」では、優勝者が弾く小型のオルガン=ポジティフ・オルガンの演奏が聴けるかもしれません(今回はまだ具体的な予定がアナウンスされているわけではありません)。こちらも楽しみに待ちましょう!