松下玲子武蔵野市長、任期半ばで辞職。年内に市長選実施へ(更新)

今年開催された吉祥寺秋まつりで挨拶する松下玲子武蔵野市長(2023年9月10日=週刊きちじょうじ撮影)

松下玲子武蔵野市長(現職)は、2023年11月5日(日)14時から吉祥寺東急REIホテルで開催された「政治活動20周年感謝の集い」で、次の衆議院選挙に東京18区(武蔵野市・小金井市・西東京市)から出馬することを正式に表明しました。先日引退を表明した菅直人元総理大臣の後継としての立候補です。

第1期は邑上守正市政の継承を掲げ当選、今期は子育て中心に実績強調し、再選

松下玲子氏は1970年9月26日愛知県名古屋市生まれ。2005年の東京都議会議員選挙では武蔵野市選挙区から旧民主党公認で初当選。2期を務めましたが、2013年と2017年の都議選では次点で落選。その後、2017年の武蔵野市長選挙では邑上守正市政の継承・発展を掲げ立候補し、無所属新人で元市議の高野恒一郎氏(当時45歳)を破り、初当選していました。

松下玲子氏は2期目となる前回(2021年)の選挙では保育園の待機児童ゼロや子供の医療費18歳までの無償化などの実績をアピール。コロナ禍における市政運営が焦点となる中で『いのちを守り育む武蔵野を!』と題し9項目の政策を掲げ、選挙戦を戦いました。

前回の選挙戦で掲げられたマニュフェスト。

これらの重点9政策のうち、明確に制度化が示されている政策の進行状況は以下のとおり。

  • 子どもの権利条例
    令和5年(2023年)4月から施行
  • 気候市民会議
    第1回会議が令和4年7月26日に開催され、これまでに合計4回の会議を開催。11月22日には、第5回目の会議が開催される予定。
  • 武蔵野市パートナーシップ制度
    令和4年(2022年)4月から開始。
  • 住民投票条例の改正(常設の住民投票条例制定に向けた議論)
    2022年12月21日の本会議にて否決。今後の方向性については、現時点では未定。2023年7月5日に有識者会合を初開催。現在までに合計3回の有識者会議を開催中。
  • 武蔵野公会堂のリニューアル
    武蔵野公会堂改修等工事設計業務公募型プロポーザルの公開プレゼンテーションが、11月1日に開催されたばかり。

子育てのしやすさ、真に試されるのはここからだ

待機児童数の解消などの数字が目立つ武蔵野市ですが「本当に子育てしやすいのか」でいえば議論もあります。たとえば、確かに待機児童の数は2022年もゼロですが、これは認可外保育園も含めて「入れたかどうか」。量と質という意味でいえば、まだまだ改善ができる部分も多いはずです。

また、保育所を増やすということは、職員を増やさなければならないということ。長年経験を積んだ職員による指導や、施設同士の交流の促進などを通じて、長期的に質を高めていくための試みが真に必要とされるのはこれからです。

デジタル庁が提供している「自治体での子育て・介護関係の26手続のオンライン化取組状況に関するダッシュボード」からは違う側面も浮かび上がります。子育て・介護関係の手続きがオンライン(マイナポータル)でできるようになっている割合は2023年3月末の時点で、武蔵野市は23%。近隣自治体と比べても低い数値でした。

子育て関連の手続のうち、児童手当や子どもの医療費助成、ひとり親家庭等向けの手当・助成の一部手続きは2023年6月よりオンライン化しており現況は改善し始めているとはいえますが、市のオンライン化施策はまだ検討中の部分が多いのも確か。また、三鷹市では10月から、病児・病後児保育のオンライン予約がスタートしていますが、武蔵野市ではまだ。こうした「実効性の高い施策」という意味では、忙しい子育て世代としては、求めていくべきところもまだまだありそうです。

吉祥寺の街づくりは道半ば。どうなる?パークエリア

もうひとつ、市長が挙げていたのがインフラの老朽化。武蔵野市では昭和30年〜50年代に学校や公会堂の鉄筋コンクリート化が進みました。水道管等の基本的なインフラも維持管理が必要です。社会保障に係る費用が増大していくのに市の歳入(収入のこと)は増えない中で、今後建て替えや修繕の計画を考えていく必要があります。

特に吉祥寺エリアでしばしば議論になるのは、駅南口のいわゆる三角地帯から武蔵野公会堂周辺の、武蔵野市が「パークエリア」と定義するエリア。このうち、武蔵野公会堂については改修等工事設計業務公募型プロポーザルの公開プレゼンテーションが、11月1日に開催されたばかりです。

現在は市民参加により、まちの将来像を決めていく手法(プロセス)の検討と取りまとめが進められ、将来像の立案にむけたキックオフに向けた動きが進められているところ。

武蔵野市長の任期満了は本来であればあと2年(2025年)。選挙戦の結果によっては、これらのプロセスが大きく方針転換を迫られることになる可能性もありそうです。

11月末で辞職、年内に市長選実施へ(2023年11月9日追記)

松下玲子市長は9日に開いた記者会見で、10日に市議会議長に退職届を提出すると明らかにしました。退職は今月末(30日)付けの予定。公職選挙法では、選挙を行うべき事由が生じた日から50日以内に選挙を行うと定めており、年内に武蔵野市長選挙が行われることになります。