街々書林の今月の旅する1冊

吉祥寺中道通りに位置する「街々書林 Books & Gallery」の店主であり、旅に関する本を執筆してきた「旅行作家」でもある、小柳淳さんによる月イチの連載コラムです。本の世界の「旅」を、どうぞお楽しみください。
山の辞典 〜街々書林の今月の旅する1冊
「週刊きちじょうじ」と「週刊きちじょうじオンライン」で毎月第1週にお届けしている「街々書林の今月の旅する1冊」。 「街々書林 Books & Gallery」は、旅にまつわる本や雑誌、雑貨を販売しているユニークな書店。吉祥寺中道通りに位置しています。街々書林の店主であり旅に関する本を執筆してきた「旅行作家」でもある、小柳淳さんによる月イチの連載コラム、本の世界の「旅」をどうぞお楽しみください。

山の辞典

山の辞典
織田紗織 /川野恭子 著・写真
雷鳥社
価格:1,650円
発売日:2024年5月5日
ページ数:320ページ
書籍詳細
日本の山々を美しい写真と短かな文章で綴るコンパクトな本。辞典という言葉どおり、たくさんの山と山に関する事柄が載っている。目次の分類を見ると、この本の内容が伝わってくる。地Ground、荘Hut、苔Moss、水Water、光Light、花Flower、星Star、海Sea、紅Crimson、雪Snow。荘は山小屋のこと。紅は紅葉だが、小さな本ながら赤、紅、橙、黄、茶の美しい山々が表現され、日本の紅葉の多彩な美しさを再認識する。山から少し広げて、高原や湿原、渓谷や渓流なども出てくる。でも、なぜ山の本に「海」の章があるのか。それはぜひこの本を手にとって見てほしい。

この『山の辞典』は見開き2ページでひとつの山や場所を紹介している。文章はエッセンスを示す短いもので、登山のガイドブックにはならないけれど、山に行きたくなってくる。そしてかつて登山した人には、一歩一歩登りそして降りてきた記憶がよみがえる。最初から順番に読まなくても、どこかのページを開いて眺めるだけで充分楽しめる。ニックネームで「ムーミン谷」と呼ばれる谷間もあるのだというが、写真で見ると納得である。そんなことに感心しながらページを行ったり来たりしてしまう。A6判の小さな本だけれど、最初から最後まで美しい景色で埋められていて、日本の山々の素晴らしさが詰まっている。
