アンジェリカで映画の話を

アンジェリカで映画の話を

毎月第2週にお届けする「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。

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「週刊きちじょうじ」と「週刊きちじょうじオンライン」で毎月第2週にお届けする「ANGELIKAで映画の話を」。「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。

ANGELIKAは吉祥寺・中道通り近くに位置するこだわりのコーヒーとワイン、エッグタルトを提供するお店。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。

『BAUS 映画から船出した映画館』

映画は窓!映画は明日だ!

『BAUS 映画から船出した映画館』
監督:甫木元空
2024年/日本
全国公開中

公式ウェブサイト

吉祥寺のバウスシアターは、映画は勿論、演劇や音楽ライブなど様々なエンターテイメントを発信してくれた、私にとっても思い入れのある大好きな場所です。本作は同館が閉館した1914年5月31日、創設者の本田拓夫が井の頭公園のベンチに座っているシーンから始まり、彼が思いを馳せるという形で約90年の歴史がエネルギッシュに描かれます。1928年に父サネオが雇われた吉祥寺初の映画館・井の頭会館が、ムサシノ映画劇場、バウスシアターへと形を変え、時代に翻弄されながらもチャレンジ精神で三代の映画館を守り続けた本田家。地域に根づいた映画館として、映画を観る場所以上の存在を創り上げました。

回想ものにつきもののノスタルジーを感じさせません。映画の中で、未来を常に明日と表現していたことが、物語が現在に繋がっている感覚になる理由のひとつでした。映画館という形は無くなっても、バウスシアターの精神は受け継がれ今も続いているということが、強く伝わってくる映画です。

『BAUS 映画から船出した映画館』 2024年/日本/監督:甫木元空/出演:染谷将太、峯田和伸、夏帆ほか 配給:コピアポア・フィルム ©本田プロモーションBAUS/boid 全国公開中

『BAUS 映画から船出した映画館』を観たあとは、この映画がおすすめ!『PARKS パークス』

『PARKS パークス』 2017年/日本/監督・脚本・編集:瀬田なつき/出演:橋本愛、永野芽郁、染谷将太ほか ©2017本田プロモーションBAUS

『PARKS パークス』
監督・脚本・編集:瀬田なつき
2017年/日本

公式ウェブサイト

『BAUS 映画から船出した映画館』を観たあとにおすすめしたい1本は、井の頭恩賜公園開園100周年記念映画『PARKS パークス』です。企画したのはバウスシアターの創設者・本田拓夫氏。「吉祥寺の文化的な拠点が無くなってしまった、と多くの人に惜しんでもらった自分が、吉祥寺には公園という人が集まる魅力的な拠点がずっとあることを、皆に知ってもらうために映画を作ることにした」と語っていらっしゃいます。

主人公は公園のそばに住む大学4年生の純。亡き父の青春を探しに吉祥寺へ来た高校生ハル、音楽スタジオで働くトキオと出会い、テープに途中まで残っていたハルの父の曲を3人で完成させることになります。公園内から街へと駆け抜け、様々な音を拾い集めながら、50年前の曲を今に蘇らせようと夢中になるのです。

純は、将来のことも恋愛のことも何もかもが不安。「私は迷ってばかり。ずっと同じところをぐるぐるしている」と嘆く純に、迷っていい、やがてまわり道も楽しくなるからと言ってくれる大人がこの街にはちゃんと居てくれます。年齢も時代も超えた人と人、人と街、街と音楽といったさまざまな繋がりが、この映画には溢れています。

吉祥寺にゆかりのある20組以上のミュージシャンが参加しているのも本作の特徴。そして、映画の始まりと終わりのシーンは、桜の季節の井の頭公園。橋本愛、染谷将太など共通の出演者も多い『BAUS~』同様、吉祥寺の魅力を再発見できる映画です。