吉祥寺村立雑学大学2089回(2021/08/28)雑大レポート『賢治と莞爾と15年戦争』

====== 本記事は、雑学大学に参加された方によるレポート記事です ======

コロナ禍で開催された東京オリンピック2020は、意外にも不思議な国・日本の姿を炙り出しました。

諸外国が都市封鎖などで市民の行動を制限し、感染を抑え込もうとしたのに対して、日本は

「不要不急の外出を控えて下さい」とひたすらお願いを繰り返し、自粛の常態化が

先の見えない混迷を深めていきました。

市民の行動制限を強制するのは「日本には馴染まない」と繰り返す政治家は、詳しくその理由を語ろうとはしません。

日本国憲法にはなくて、明治憲法にはあった「緊急事態条項」には悪しき歴史がありました。

明治憲法に明記されていた緊急勅令を使って1928年、田中義一内閣が議会で廃案になった

治安維持法改正案を強引に成立させました。

「緊急事態」を口実に議会の関与なしで、突然、人々の権利や自由が奪われてしまったのです。

言論や思想の自由を失った日本は戦争への坂道を転がり落ちていきました。

破滅的な戦争は、明治憲法の統帥権独立が軍部暴走を招いたとの指摘もあります。

かつて世界戦争が避けられない状況で、帝国主義・列強の侵略に憤り、満州の地に

日本の活路を模索した石原莞爾ら多くの人たちがいました。いろんな民族が移住できるアメリカのような

フロンティアが誕生したと、そんな夢を見ていた頃もあったのです。

過酷な15年戦争の時代に翻弄された賢治は、平和な理想郷が地上に実現することを願いながら

詩や童話を書き続けたのでしょう。

「憎むことのできない敵」を殺さないですむ世界が地上に実現することを願って。

(文責:井上幸夫)

講師:井上 幸夫 氏