吉祥寺探検隊

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吉祥寺の「あれなに?」「どうしてこうなった?」その謎を解明するため、我々調査隊は吉祥寺コンクリートジャングルの奥地へと向かった・・・。

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【インタビュー】井の頭公園の動く銅像「なにみてるの」は、なに考えてるの? パフォーマー塚越光さんに、大道芸の裏側を根掘り葉掘り聞いてみた!

緑が多い井の頭公園は、散策するだけでもすごく癒されますよね。私はお散歩中の色んな犬種のワンちゃんとすれ違えるのが、いつも楽しみです。土日になると、公園のあちこちで大道芸人さんのパフォーマンス(大道芸)を見ることができます。ジャグリングやバルーンアートなど、巧みで楽しいパフォーマンスに思わず足をとめた方も多いのでは。

今回インタビューしたのは、白鳥ボートでおなじみのボート置き場の近くで、スタチュー「なにみてるの」というパフォーマンスをしている塚越光さん。パフォーマンスの裏側について、かなりぶっちゃけてもらいました!

《スタチューとは》
立像や彫刻、人形などの様々な「像」になりきって行うパフォーマンスです。絵画を立体視させたり、コミックから飛び出したような姿をしたり、いろんなバリエーションがあります。

「なにみてるの」って、どんなパフォーマンスなの?

今回インタビューに答えてくださったのはこちらの銅像?!その名も「なにみてるの」です。

では、この銅像の職業はなんでしょう?
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ヒントは手に持った虫眼鏡です。
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正解は、探偵! 探偵が虫眼鏡で真剣に何かを見ているので、この銅像の名前でありパフォーマンスのタイトルは「なにみてるの」なんです。

銅像になりきるパフォーマンスって、同じポーズのまま動かないイメージがありませんか。ところが、「なにみてるの」は動くんです。それどころか、お客さんとコミュニケーションを取っちゃうんです。

例えば、近づいてジーッと見つめたら、銅像もジーッと見つめ返します。「こんにちは!」と挨拶をすると、銅像も笑顔で手を振ってくれます。演じている塚越光さんは、大道芸人以外にミュージカルやお芝居に出演するなど俳優活動もされています。

「なにみてるの」に、なに考えてるのか聞いてみた

——なにがきっかけで、大道芸をやろうと思ったんですか?——
僕は横浜生まれなんですが、地元の六角橋商店街にチンドン屋さんがよく来ていたんです。それで自分でもやってみたいなと。大学時代に早稲田大学のチンドン屋のサークルに入部して、学生団体として路上に出ていました。

——銅像になるパフォーマンスって、賑やかなチンドン屋さんとは真逆のように感じます。どうして銅像になろうと思ったんですか?——
チンドン屋をやりながら、いろんな芸を磨きたいなと思って、やはり早稲田大学の「パントマイム舞☆夢☆踏」というサークルにも入部したんです。そこで、マイムなどのパフォーマンスを学びました。このサークル出身で活躍している大道芸人、多いんですよ。卒業後、わらび座という秋田の劇団に数年所属した後、東京に戻ってきてスタチューパフォーマンス協会のワークショップに参加しました。そこで、スタチューの面白さを知り、銅像のパフォーマンスを作り上げました。

——「なにみてるの」はどんなコンセプトで作ったんですか?——
いろんな街にチンドン屋で行くたびに、その街独特の良さがあるなぁって。それで、「みなさんが何気なく暮らしている街には、もっと面白いものが隠れてますよ」というメッセージを込めたパフォーマンスがしてみたくなったんです。普段は素通りしている風景に注目してもらうにはどうしたらいいかを考えて、虫眼鏡を持った探偵のキャラクターを作り上げました。

——「なにみてるの」というタイトルはすごく秀逸ですよね。実際見せていただいた時に、小さい子たちが「なにみてるの〜?」って言いながら銅像に近寄っていて、なるほど!と思いました——


作った当初、疑問文をパフォーマンスのタイトルにしている大道芸人はいなかったので、「絶対に名詞にしたほうがいい」って、先輩方に散々言われました(笑) でも、喋らないパフォーマンスだから(言葉を使って)主張できるのはタイトルだけだったので、どうしても「なにみてるの」にしたくて。子どもたちの反応を見て、自分の判断は正解だったなと感じました。

——「なにみてるの」を井の頭公園でやるからこその良さってどんなところですか?——

まずは、四季の移り変わりの美しさですね。一週間経ったら同じ場所でも、まったく景色が違うんです。それと、地元の方の生活に根付いているのがいいですね。何回も会いに来てくださる地元の方がいたり、お散歩をしている年配のご夫婦から「また今週も頑張ってるわね」なんて話しかけてもらったりしています。

——井の頭公園で大道芸をするには、特別な許可が必要なんですか?——
アートマーケッツという制度があって、公園内でハンドメイドの物を販売したりパフォーマンスをしたりするには登録が必要です。販売の枠は多いんですが、パフォーマーの枠は30組限定で、空きが出た時だけ募集しているので争奪戦なんですよ(笑) 都の職員さんとパフォーマンス内容について面談をして、合格した中から抽選で選ばれます。

——ボート置き場の近くって印象に残りやすいですよね。パフォーマンスの場所は自分で選んだんですか?——
公園内に何箇所かパフォーマンスできる場所があるんですが、あの場所は狭いので複数人のパフォーマンスやたくさん動くパフォーマンスには向かないんです。僕は一人だけで台座から動かないので問題ないし、人通りが多くて良いなと思って選びました。

——「なにみてるの」の話をすると、結構な確率で「見たことあるかも!」って言われます——
ありがたい!最近、別の場所でパフォーマンスしていると、一日に一回は「井の頭で会った人だ!」って言ってもらえます。やっぱり井の頭公園って、みんな来てるんだなぁって。なんとなく憶えてもらえてるっていうのが嬉しいですよね。そもそも銅像って「そういえば、あそこにああいう銅像あったなぁ」ってなんとなく憶えているものじゃないですか。舞台の共演者の友達や親御さんなんかも知っててくれたりするので、悪いことできないなと(笑)

——井の頭公園での印象深いハプニングを教えてください——
スマホを見ながら歩いてきた男性に、本物の銅像と間違って寄りかかられたことがあります。男性はすぐに驚いて飛びのいたので、僕も驚いた!ってリアクションを返しました。あとは、やっぱり子ども関連ですね。興奮してしまった子どもが看板を踏み壊してしまったり、急にお菓子を渡してくれたり(笑)どっちも、僕が受け入れて笑いながらリアクションしたので、お客さん達も笑ってくれました。

《他にもいくつか井の頭公園で起きたハプニングを教えてくれました》

・目の前のお客さんに鳥の糞が落ちてくるのを目撃してしまった。(ご本人が笑っていたので、僕も笑ってリアクションをしました)

・投げ銭が突風で飛ばされた。(無事拾えました)

・体に蝶が止まったり、蜘蛛が這ったりした。(虫がとまるとお客さんが驚いてくれるので嬉しいハプニングです。そのまま過ごします)


——「なにみてるの」どんなふうに楽しんでほしいですか?——
銅像だけでなく、手を振ったり話しかけたりしてくれる方とのやりとりを見ていただきたいです。そして、もしよければ、銅像とコミュニケーションをとってもらえると嬉しいです。

——小さい子が「怖いけど気になる、でも怖い」ってリアクションをしていて可愛かったです!——
そうなんですよ。泣きそうなんだけど手は振ってくれたり、怖がりながら投げ銭を入れてくれたり。子どもの成長が感じられて嬉しいですね。子どもが怖がっている時「大丈夫だから行っておいで」って背中をおす親御さんが多いんですけど、そういう時はぜひ親御さんが率先して僕と遊んで欲しいです。大人の姿を見て子どもが学習するので。

——ところで、銅像になる準備って、どこでしているんですか?——
現地です(笑) 大体パフォーマンスを始める20分くらい前に公園に着いて、それから木陰でこっそり準備をします。帰りも、終わった後にこっそり木陰で全部着替えます。

——「なにみてるの」に必要な荷物ってどのくらいの大きさなんですか——

キャリーケースで、大きめのバッグと自分が乗る台座を持っていきます。パフォーマーの中では比較的荷物が少ない方ですね。

——どのくらいの時間、パフォーマンスしているんですか。真夏や真冬は大変そうです——
まちまちですけど、大体3時間から4時間くらいです。真夏はときどき台から降りて、愛想を振りまいたりしつつ水分補給します。冬は、服の中にカイロをたくさん貼っています。猛暑日に公園に行ったら誰も歩いていなくて、一瞬で帰りました(笑)

——色々突っ込んだ質問にお答えいただきありがとうございました。最後に、今後、井の頭公園で挑戦したいことはありますか?——
だいぶ「なにみてるの」が地元の方に浸透してきたので、飽きられる前に新しいパフォーマンスもやりたいなと(笑) 他の大道芸人さんとコラボしたり、全く新しいテーマにも取り組んでみたいです。

「なにみてるの」が、なにみてるか見に行こう!

一期一会でパフォーマンスを見るのも楽しいですが、色々裏側を知ったうえで見るとさらに味わい深いのでは。「なにみてるの」の虫眼鏡を通して眺めたら、井の頭公園の新たな魅力に気づけそうです。休日の井の頭公園で「なにみているの」に挨拶したり手を振ったりしてみてはいかがでしょうか。もしかしたら、蝶々が銅像にとまっているようなレアな風景に出くわすかもしれません。

「なにみてるの」今後の予定

「なにみてるの」井の頭公園登場予定

井の頭公園アートマーケッツ
「手作りアート作品&パフォーマンス」のマーケット
毎週土日祝の9:00〜17:00(GWは平日も開催/お花見時期は休み)
※「なにみてるの」のアートマーケット出演予定は塚越光@pikaru_nanimi にて

塚越光さん出演予定

ポイヤツらのパントマイム『テイク418』
8月18日(金) 〜20日(日)
シアターグリーン BOX in BOX THEATER