アンジェリカで映画の話を

アンジェリカで映画の話を

毎月第2週にお届けする「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。

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「週刊きちじょうじ」と「週刊きちじょうじオンライン」で毎月第2週にお届けする「ANGELIKAで映画の話を」。「カフェ&ワインバル ANGELIKA(アンジェリカ)」共同オーナーの髙田和子さんによるコラムです。

ANGELIKAは吉祥寺・中道通り近くに位置するこだわりのコーヒーとワイン、エッグタルトを提供するお店。コラムを担当する髙田さんはANGELIKAと平行して、現在も映画関連のお仕事をされています。映画愛がつまった月イチの連載コラム、どうぞお楽しみください。

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』

かき鳴らせ、ボブ!

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』
監督:ジェームズ・マンゴールド
2024年/アメリカ
全国公開中
公式ウェブサイト

60年代のNY、無名の歌手から時代の寵児としてスターダムを駆け上がる若き日のボブ・ディランを描く映画です。 彼が歌詞を書く時のひたむきな姿が印象的です。完成した歌が支持され“若者の代弁者”に。成功を手に入れますが、恋人は去ります。スターになった以上すべてのファンのために歌う必要が?「彼らが望んでない俺自身でいたい」と言うボブは、「時代は変る」という自身の歌詞を証明するように、自分が望む新しい表現で音楽界を変えるのです。

本作でボブが歌う最初の歌は、敬愛する歌手ウディ・ガスリーの病室での1曲。ボブの表現の原点は、ただ1人のために歌う歌でした。彼の心の師の存在が、美しいラストシーンに結びつきます。全曲自ら演奏し歌った主演ティモシー・シャラメの演技を、ボブ本人が絶賛したそうです。俳優と役との幸運な出会い! 歌のシーンのすべてに胸が熱くなりました。映画館で観るべき映画です。

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』 2024年/アメリカ/監督:ジェームズ・マンゴールド 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved. 全国公開中

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』 を観たあとは、この映画がおすすめ!『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』

『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』 2005年/アメリカ/監督:ジェームズ・マンゴールド © 2025 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. ディズニープラスのスターで配信中

『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』
2005年/アメリカ
監督:ジェームズ・マンゴールド
ディズニープラスのスターで配信中

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』を観たあとにおすすめする『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』は、同じジェームズ・マンゴールド監督が、やはり実在するミュージシャン、ジョニー・キャッシュを主役にした映画です。

『名もなき者』の中で、キャッシュは、若いボブに「自分がやりたい演奏をしちまえ!」とけしかける先輩歌手として登場します。一方、本作にボブ・ディランは登場しませんが、ボブからの手紙をキャッシュが大切に持っていることが分かるシーンが出てきました。

ジョニー・キャッシュとジューン・カーター(実際の写真)

キャッシュを演じるのはホアキン・フェニックス。カントリー界のアウトローはまさにハマり役! キャッシュのミューズとなる歌手ジューン・カーター役のリース・ウィザースプーンは、本作でアカデミー賞主演女優賞を受賞しました。愛が嫉妬に変わる。理解できるがゆえに突き放したくなる。同業者同士の複雑な恋愛関係と同時に、やはり、ふたりの実力派俳優の吹替えなしの歌のパフォーマンスが本作の見どころです。

「聞いた人が絶対忘れない、それを聞けば君という人間がすべて分かる歌こそが、本当に人を救う」。オーディションでの最初の1曲にダメ出ししたプロデューサーがキャッシュに告げたこの言葉は、ジェームズ・マンゴールド監督の、偉大なミュージシャンたちへのリスペクトが込められている台詞なのではと思いました。

ジョニー・キャッシュ(実際の写真)