土田圭介 鉛筆画展 心の灯り

土田圭介《行方》

10Hから10Bの鉛筆を駆使し、縦のストロークを無数に描き重ね、緻密で圧倒的なモノクロームの幻想空間を創出する鉛筆画家 土田圭介(つちだ・けいすけ 1974年生まれ)。

 土田が、描き続けているモチーフは「心」です。「心の動きは言葉では表せるが形にできない。けれども、形のないものに形をつけていくとどうなるのか、それを作品にしてみたい」と語るように、心を静かに見つめ、鉛筆のみで声高に主張することなく、自身の中にあるものを掘り起こして形にします。また、土田の作品の一番の特徴は、緻密に一筆一筆描きこまれた縦のストロークです。鉛筆画の写実的なリアリティとは異なり、縦の線を重ねることで生まれる“揺らぎ”は、独特のリズムを生み出すとともに、靄がかかったような幻想的な世界を構成します。それは、“形のないもの”に形を与えることに専念する土田のイメージした世界感を的確に表現することとなりました。

 本展では、これまでの代表作に加え、祈りをテーマに圧倒的なスケール感と深い物語性で描かれた新作《行方》をご紹介します。真っ暗な闇の中、かすかな灯りをともしながら様々な思いを乗せて前に進んでいく舟。その舟に乗る幻想世界の住人たちはまるで、激動する現代社会を生きる人々の欲望や不安、緊張、未来への希望を願う様々な姿を映し出しているかのように感じられます。

 それぞれの作品の中に流れる空気感や作品世界に息づく住人たちに思いを巡らせ、モノクロームの世界に描かれるさまざまな「心」の形をどうぞご堪能ください。