「戯曲組」による男女格差を問う女性二人芝居『エアスイミング』が12月21日から上演

クリスマスももう目前ですね。街はきらびやかに彩られ、お店にもケーキや装飾・アイテムなどクリスマス仕様の商品がずらりと並んでいますよね。

ですが、浮かれた雰囲気ばかりがクリスマスではありません。町に喜びと光に満ちあふれている時だからこそ、家族に会うこともなく特別なお祝いをすることもなく、住む家や今日の食べ物の心配をしている人たちを忘れないでいたいという想いをもつ方々がいるのです。

それが演劇ユニット「戯曲組」さん。
そんな「戯曲組」さんの第6回公演『エアスイミング』が12月21日(水)から上演されるんです。

演劇『エアスイミング』 絶望と希望と友情はジェンダーギャップをどう乗り越えるのか

演劇ユニット「戯曲組」さんは⼥性俳優や映画監督、脚本家として活躍する吉村元希さん主宰の演劇ユニットです。
「戯曲組」さんでは、テキストを読むことによってわき起こる演者の身体反応に注目し、等身大の人間対人間のコミュニケーションや表現について提案する演劇的芸術表現を目指しています。
2022年9月にはシェイクスピアの悲劇『オセロー』を現代版に翻案し、男女格差に正面から向き合う作品『令和X年のオセロー』を上演されていました。

そんな演劇ユニット「戯曲組」さんが今回上演する演劇『エアスイミング』もまた男女格差を問う作品となっています。
この演劇の舞台は1920年代のイギリス。収容施設「聖ディンプナ病院」に収監された二人の女性は「女性らしく振る舞っていない」「婚外子を産んだ」という理由で精神障害とされていました。物語の中で2人は孤立し絶望するも、想像力を駆使し互いを励まし合い、50年もの長い時間を乗り越えていくのです。
この戯曲作品『エアスイミング』について、作者であるシャーロット・ジョーンズは「絶望をテーマにしたコメディ」とコメントしており、20世紀のアイルランドの劇作家サミュエル・ベケットによる不条理演劇の代表作『ゴドーを待ちながら』の女性版作品とも言われています。

『エアスイミング』2021 年上演の様子

そんな戯曲『エアスイミング』を「戯曲組」さんが上演するのは、実は今回が2度目。
一度目の上演が行われたのは昨年12月のクリスマスの時期でした。演劇ユニット「戯曲組」を主催する吉村元希さんと女優の渡辺梓さんで上演し、「絶望と希望と友情を通して、現代社会のジェンダーギャップに⼀⽯を投じる作品だった」と好評を博していました。『エアスイミング』という作品の中で描かれる「どんなに絶望的な環境であっても本質的に心は自由でいられること、友情の中で得られる救い、ダンスや歌が喜びや癒しを与えてくれること」が劇の中でどう表現されるのか注目ですね。

なお、今年は同キャストで役を交換して上演が行われるため、昨年の上演を観た方はぜひ去年との差にも注目してみたいですね。

吉村元希さんコメント

コロナ禍によって浮き上がって見えたジェンダーギャップに、それまで考えていたよりも、女性の社会的立場の弱さを感じざるを得ませんでした。私自身、1 人の女性として、まだまだこの「エアスイミング」という戯曲を届けたい女性がたくさんいます。
この作品は「女性という枠組みに入ることが出来なかった女性」を描いていますが、世の中には他にも多くの枠組みがあります。「男性という枠組み」「娘としての枠組み」「息子として」「親として」等々。与えられた枠組みの中で生きることは楽なのかもしれません。しかし、社会が今大きく変わろうとしていることをコロナを通して感じている人も少なくないでしょう。
本当にその枠組みの中にいることが、楽ですか?
文化とはそうした社会の変動をいち早く感じたクリエーターたちが、人々にそれを伝える。そうした仕事を担っているのではないでしょうか。

渡辺梓さんコメント

私にとってこの作品は、生きている時代も家族関係も状況も違うけれど、周りと混じり合わない感性、考え、価値観を持つ人間が、周りに迎合しないことによって、否定され、受け入れてもらえない状況は、大きさや形が違うにしても、私たちの今の日常にも潜んでいる様に思います。
自分の意思とは関係なく生きづらさを感じている人は多い。
社会から排除され、それまでの日常を奪われ、隔離され絶望の中にいた 2 人が出逢ったことで、生きようと、生きる方法を見つけていく。その「力」はなんなのか。前回とは違う役に挑戦する事で、この作品の持つ「生命力」をしっかり掴むことができる様に思いました。そしてその「力」を、観ている人と共有したい。
そんなことを思い、この作品に取り組んでいます。

有志俳優によるリーディングワークショップ公演も

さらに、多くの人を巻き込みこの戯曲への理解を深めるため、新しい試みとして有志の俳優によるジェンダーフリーでのリーディングワークショップ公演も行われます。
ワークショップは無料で公開されるので、公演とあわせてご覧になってみてはいかがでしょうか。

クリスマスだからこそ、視点が変わる「カンゲキ」を

この作品・演劇は確かに観る人の多くが「重い」「辛い」「苦しい」と感じざるを得ない設定をしています。「そんな演劇をクリスマスに観たくない」と思う人もいるでしょう。しかし、クリスマスという大勢の人が明るく華やかな時間を過ごしているからこそ、あえてそう過ごせない人たち(例えば物語の主人公となる2人の女性の声のような)へ意識を向けてみませんか?

観劇後に外へ出たとき、あなたの目に映るクリスマスの景色ははきっと観劇前と違ったものになるかもしれませんね。

演劇ユニット「戯曲組」女性二人芝居『エアスイミング』

会場 アトリエ戯曲組(吉祥寺駅徒歩13分) 詳細な場所は予約後にメールで通知されます

  • 開催日
    2022年12月21日(水)〜25日(日)
    時間
    12月21日(水)19:00 22日(木) 19:00 23日(金)19:00 24日(土)16:00 25日(日)17:00 開場は開演の30分前
  • 料金など
    一般 5,000円
  • 出演
    ペルセポネー 渡辺梓 ドーラ 吉村元希
  • 主催
    演劇ユニット「戯曲組」

エアスイミング無料ワークショップ

会場 アトリエ戯曲組(吉祥寺駅徒歩13分) 詳細な場所は予約後にメールで通知されます

  • 開催日
    2022年12月24日(土)/ 25日(日)
    時間
    12月24日 12時 12月25日13時 開場は開演の30分前
  • 料金など
    無料
  • 出演
    三木万侑加 𠮷田みずほ キリケン 杉井孝光
  • 主催
    演劇ユニット「戯曲組」