ラウェイファイター渡慶次幸平さん。未来を担う子どもたちへ伝えたいのは「人のための行動が自分のためになる」

今回は、武蔵野市の1日警察署長を務めたり、吉祥寺ハロウィンフェスタで子どもたちのために参加チケットをプレゼントしてくれたりと、吉祥寺の未来のためにも積極的に活動している渡慶次さんを取材しました。週刊きちじょうじからの取材申し込みをすぐに快諾してくれた渡慶次さん。地域に密着した活動やこれまでの街との関わり方、その想いについてのお話をうかがいました。

と、本題に入る前に、ファイターとしての渡慶次選手と所属しているクロスポイント吉祥寺ジム、そしてラウェイについて、少し紹介しておきましょう!

ミャンマー国技の「ラウェイ」ファイターの渡慶次幸平選手

渡慶次幸平

1988年6月4日 沖縄県豊見城村生まれ。クロスポイント吉祥寺所属。 幼少期から高校卒業まで野球を続け、高校卒業後から格闘技をはじめる。総合格闘技のプロとして活動した。2017年からミャンマーの国技「ラウェイ」の選手として試合を重ね、2018年にミャンマーで世界チャンピオンになる。2020年にはラウェイに挑戦する選手を追ったドキュメンタリー映画「迷子になった拳」に出演。現在、2児の父としても奮闘中!

ラウェイ 渡慶次 幸平 オフィシャルサイト

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「地球上で最も危険な格闘技」ラウェイのファイターである渡慶次 幸平選手のオフィシャルサイトです。 https://tokeshi.info/

フィットネス&格闘技ジム「クロスポイント」

吉祥寺駅から徒歩6分。五日市街道沿いにあるフィットネス&格闘技のジム。格闘技を通じてフィットネスを行う一般会員と、格闘技のプロ選手を目指すアマチュアの選手が通える施設。吉祥寺の他に、渋谷・府中・世田谷・大泉学園・金沢・拝島・古河にも店舗がある。(2024年1月現在)

各ジムには日本でもトップクラスの格闘技プロ選手が在籍し、インストラクターとしても活躍。吉祥寺店には初心者や女性向けクラスの他に小学生以下のキッズクラスもあり、練習を積み重ねた選手から質の良い指導が受けられるとお客さんに好評。

ミャンマー国技「ラウェイ」とは?

ラウェイとは、勇気を象徴する戦いとして昔から親しまれてきたミャンマーの立技格闘技。グローブは付けず、拳にはバンテージ(長い包帯)を巻く。1ラウンド3分を5ラウンド行い、インターバルは2分。パンチやキックに加え膝や肘を使った攻撃もOKとされている。試合中に失神しても2分のタイムで目が覚めれば試合が再開される。世界一危険な格闘技と呼ばれることもある。

吉祥寺中道通りのコンビニバイトから学んだ「人のためにやる」=「自分のためになる」

リングの外では穏やかな雰囲気の渡慶次さん。「格闘技だけで食べていくってすごく大変なこと」と話し始めてくれました。

高校卒業後、老舗団体パンクラスにて総合格闘技のプロとして活動していた渡慶次さん。勝ったり負けたりと、うだつが上がらない渡慶次さんに、浮上のきっかけとなればとジムの会長がラウェイ参戦の提案をしてくれました。渡慶次さんは28歳の頃からクロスポイント吉祥寺の選手としてラウェイへの試合へ出場しはじめます。

当時は、ファイトマネーだけで生活していないのにプロの格闘家といえるのか?と疑問を持っていましたが、数ヶ月に1度の試合でもらうファイトマネーだけで生活していくのは至難の業。ジムのオーナーさんの紹介で、中道通りにあるセブンイレブンでアルバイトをしながら練習や試合に取り組んでいました。

――格闘家とアルバイトの両立は難しくなかったですか?――

試合の後とか顔が腫れてても、コンビニに来るお客さんは自分が格闘技をやってるって知ってくれてるから驚かれないんですよ。応援もしてくれるし。お客さんが『試合頑張ってね』って声をかけてくれたり、差し入れをくれたりして嬉しかったです。みんなが見てくれてるっていうことは、自分がもっと頑張ろうという気持ちにつながりましたね。

――お客さんからの応援が、試合をやっていく上でも力になったのですね。――

でも、ケガも絶えないし、パッと見何やってるやつなんだろうって思いますよね。だから怪しいヤツじゃないよ、渡慶次いいヤツじゃんって思ってもらえるように働いてました(笑)

雪がたくさん降った日に、お店の前だけじゃなく近くの道全部の雪かきをしたんですよ。そしたらお客さんもお店に来やすいし、お店にとってもお客さんにとっても良いじゃないですか。お年寄りの荷物を持って届けにいったりもしてたんですけど、人のためになる行動を続けると、それって結局は自分のためになるんです。ありがとうって言われたら嬉しい気持ちになるのは当たり前だから。今、SNSとかで「いいね!」をもらって喜ぶっていうのがあるじゃないですか。自分はコンビニで働きながら現実世界でリアルいいね!をもらえてる感じだったかな。自然に自己肯定感が上がっていくのを実感しました。コンビニに来てくれるお客さんとの関わりを通じて「人のためにやっていこう」と思えるようになりましたね。

――「人のためにやろう」というのは素晴らしい行動や考え方ですよね。特に雪かきのような重労働をすぐにやろう!となるのは尊敬しますし、行動に移すのが難しいことだと思います。――

世界一過激なルールに挑戦することで、実際にものすごいダメージを全身に受けます。それで死を意識するようになり、1日1日を大切にするようになりました。肌感覚で命の重みを感じています。ラウェイの試合を始めてから最初の4試合目ぐらいまでは、試合前に遺書を書いてましたもん。なかなか死なないのも分かっているけど、いつ死ぬかも分からない。だから、いいなと思ったことはすぐにやる。良くないと思ったことはすぐにやめる。いつ何が起こるか分からないから、常に今の時間を大事に生きています。

地域の人との関わりを通じて、「行動する→認めてもらう→もっと頑張ろうと思う→行動する」というサイクルを繰り返し、そのサイクルが自分の成長につながったと話してくれました。「リングの上で命を燃やして輝く姿を見せる」という強い想いは、いつも温かく声をかけてくれた吉祥寺の人々の支えもあったからこそ。街との絆が嬉しいですね。

未来を担う50年後の子供たちへ自分ができることを

現在は、ラウェイの試合で訪れたミャンマーで学校設立の支援や国内の児童養護施設への援助など社会活動にも力を入れている渡慶次さん。後輩の鈴木千裕選手と共に盗難防止のポスターにも出演しています。

――格闘家である渡慶次さんが、社会貢献を行っているのはなぜでしょうか。――

人にいいことをして『ありがとう』って言われたことがきっかけですね。人に感謝されることが、頑張れる原動力でした。コンビニでお客さんのために荷物を持ってあげるのとミャンマーに学校を建てるのは規模や場所は違うけど、同じこと。困っている人を助けるということをしているわけだから。みんなが良くなった方が良いに決まってるし、その方が自分も嬉しくて楽しいって思えるんですよね。

――人のための行動が渡慶次さんにとっては自分のことも喜ばせる自然な行動になっているということなんですね。――

そうなんです。だけど無理はしない。自分や家族を犠牲にしてということは絶対にできないですから。それぞれの人がそれぞれの場所で、できることをやっていけば良いと思っています。自分も良いって思えることはどんどんやっていこうと思っていて、子供の保育園の父母会長やったり、青年協議会や中学校での講演会の依頼も引き受けています。自分の考え方や良いって思うことは、下の世代にも伝えていきたいです。

――若い世代の人に、渡慶次さんの経験やお話を聞いてもらうのはとても良い機会ですね。――

自分も年を重ねて後輩が育っていくのを見ていたり、子育てをしていたりして自然と教育に興味を持つようになりました。ジムでもキッズクラスを開催していて、心も身体も強く成長してほしいと思っています。今の子供たちが50年後はきっと社会を支える中心の世代になっているじゃないですか。その子供たちへの教育って今の自分たちができる未来へのサポートだと思うので、今は保育園をつくりたいということも考えています。

2児の父でもある渡慶次さんは、自分の子どもに対しても命の重みや生死についてを真剣に伝えているそうです。動画やゲームを見て子供が簡単に使ってしまう「死ね」「ぶっ殺す」などの言葉を本当にどういう意味か分かっているか伝えたいと思っており、深掘りして考えさせるそうです。死を理解することが生きる素晴らしさや楽しさを実感することに繋がります。命をかけてリングに上がるラウェイ選手だからではなく、格闘技選手でなくても、命の重みは子どもたちにつたえていきたいところです。

吉祥寺ハロウィンフェスタの日は、子どもたちに思いっきり楽しい1日を過ごしてほしい!

より良い未来を考える渡慶次さん。毎年10月に吉祥寺駅前で開催される吉祥寺ハロウィンフェスタでは、主催するプレシャスネットさんが子どもたちに向ける想いに賛同し、無料の参加枠をプレゼントしました。

――ハロウィンフェスタでは子どもたちのための参加枠を買いきり、参加無料枠をプレゼントしたとお聞きしました。どのような想いでのプレゼントだったのですか?――

イベントを運営していく上で必ず費用がかかってくるから、参加費がかかってしまうのはしょうがないんですけど「お金がないから参加できない」にはならないようにしてあげたいと思いました。生まれた環境が違うからいろいろな差は出てきますが、そんな環境の違いを取っ払う日があってもいいじゃないですか。そういう日を増やしていきたいとも思っています。

――子どもたちや地域のために貢献する姿は、きっと吉祥寺の子どもたちにも響いていますね。渡慶次さんの行動が未来につながる希望になると思います。――

漠然と「吉祥寺を盛り上げたい」とか「応援したい」とか言うのは簡単なことですよね。でも実際に街や地元に住む子どものために何もしないっていうのは、応援してないのと同じですよ。もちろん僕も自分の無理のない範囲での支援ですけど、できることはやっていくし、その考えに賛同してくれる人もたくさんいます。世の中を変えるとなると政治家にならなきゃいけないかなと考えた時期もあったんですけど、今は自分のコミュニティーの中で良い輪を広げていけてるのを実感しています。なので、自分の周りから少しずつ良い方向に変わっていくと良いと思っています。みんなが笑顔で楽しく生きていける社会が一番!

子どもたちが担う未来が明るくなるように積極的に行動し続ける渡慶次さん。前向きに走り出したくなるような言葉でインタビューを締めくくってくれました!

人に優しくすることは自分に優しくするのと同じ。言葉と行動にブレのない渡慶次さんの姿勢が信頼を生みます。今後の渡慶次さんの活躍にも注目していてくださいね!