吉祥寺プラザ
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〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目11−19
2024年1月31日に惜しまれつつも閉館した映画館、吉祥寺プラザ。昔ながらの街の映画館である吉祥寺プラザの思い出をぜひ週刊きちじょうじに残したい! 編集部の熱意に応えてくださった吉祥寺プラザの特集をお届けします。前編では吉祥寺プラザとスタジオジブリの素敵な“縁”の深堀りエピソードや常連さんも一見さんもきっと納得!週きち編集部が挙げる吉祥寺プラザ館内の推しポイントなどを特集しました。 後編は劇場スタッフおすすめ作品の紹介やそれにまつわる心温まるエピソードをお届けします!
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Toggle吉祥寺プラザは、吉祥寺サンロードを抜けた五日市街道沿いの吉祥寺東興ビルに位置する映画館でした。閉館されてしまいましたが、2024年3月現在も吉祥寺東興ビルは現存しており、吉祥寺プラザの看板や入り口のようすを見ることができます。 今から半世紀以上前に吉祥寺プラザの前身の映画館「吉祥寺東映」が開館。1979年に現在の吉祥寺東興ビルとなり、1997年に「吉祥寺プラザへ」と館名が変更されました。吉祥寺の街で長く愛された街の映画館ですが、ほかの吉祥寺の映画館とのつながりはあったのでしょうか。もしかして、ライバル関係にあったり…?
支配人「ライバル関係にはなかったですね(笑) それぞれの映画館で上映する映画がきちんと整理されているんです。オデヲンさん(吉祥寺オデヲン:JR吉祥寺駅の東口近く)とも普段から仲良くさせてもらってましたね。余談ですが、うち(吉祥寺プラザ)が閉館して、何名かの吉祥寺プラザのスタッフはオデヲンさんに行きました(笑) なのでライバルというよりは、仲間というか一緒に興行をやってきた連帯感の方が強いですね。それはアップリンクさん(アップリンク吉祥寺:吉祥寺パルコ地下2F)でも同じです。吉祥寺のみなさんは本当に仲が良いと思いますよ。それぞれの顔がわかっていますしね。」
吉祥寺にはかつて吉祥寺バウスシアターや吉祥寺ピカデリーなど数多くの映画館がありました。映画館の大小はあれど、みな仲間だったと語る支配人さん。吉祥寺プラザに訪れるお客さまの中には、吉祥寺で働く方もいらっしゃったそう。
支配人「吉祥寺キャンドルナイトってありましたよね。あれもコピス吉祥寺さんがお声がけくださって(キャンドルナイトの)仲間に入れさせていただきました。吉祥寺の街のイベントに参加できて嬉しかったですね。」
吉祥寺キャンドルナイトは2023年11月23日から2024年1月31日まで行われた吉祥寺のイベント。大型店舗や商店街など吉祥寺の街全体がキャンドルで彩られました。私が吉祥寺プラザで上映されていた「ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅」を観に行った時が、ちょうどキャンドルナイトの時期でした。階段に灯されるキャンドルがとても素敵だったのが思い出されます。吉祥寺プラザの昔ながらの雰囲気と、キャンドルがとてもマッチしていてとても癒やされました…。
吉祥寺の街で長く映画を届けてきた吉祥寺プラザ。歴史ある街の映画館として存在してきたからこその温かいエピソードをうかがうことができました。
支配人「吉祥寺プラザでは、劇場版名探偵コナンの第1作目(編集部注:1997年4月公開の『時計じかけの摩天楼』)からずっと長く名探偵コナンを上映させてもらっていました。これもちょっと感慨深い話なんですけどね(笑) うちの劇場で務めてくれていたスタッフなんですが、子どものころから名探偵コナンは吉祥寺プラザでしか観たことないっていうんですよね。その子が大人になって吉祥寺プラザで働いてくれた。ですから、子ども時代の彼に多分私は会ってたと。吉祥寺プラザに長く務めてきて、そういう時の流れみたいなものも感じましたね。」
子どものころに訪れていた地元の街の映画館で働けるなんて、それこそ映画のようなエピソードです。私も幼いころ、吉祥寺プラザで伯父と一緒に『わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語』を観たという記憶が蘇ってきました(笑) そういえば吉祥寺プラザでは、多くの若い方がスタッフとして働いていましたね。
支配人「そうなんです。吉祥寺プラザに最後いたスタッフは、ほとんど若い人でしたね。年配の人はもういない状態になりました。そういったことでも様変わりしたと思います。映画館といえば、昔は60代以上の方が働いていて勤務が長いところでしたけど、最近はほぼ20代でしたね。若いスタッフたちは、だいたい吉祥寺プラザで働きたいと言ってきてくれた人たちでした。例えば、絵本作家であったり俳優さんだったりと、そういう目指すところがあった人たちが多かった。多分こちら(吉祥寺プラザでの勤務)が副業だと思うんですけど(笑)、副業としては映画館って向いていたんじゃないですかね。ありがたいことに、この場所だから働きたいっていうスタッフもたくさんいましたね。」
吉祥寺プラザがもつ場所の魅力は前編でもお伝えしましたが、吉祥寺プラザという場所だからこそ働きたい!という方はたくさんいらっしゃったんだなと感じます。映画好きだから映画館で働きたいというだけではなく、吉祥寺プラザの魅力が若いスタッフの方々にも伝わっていたんだと実感するエピソードです。
吉祥寺プラザの閉館後、吉祥寺プラザ入り口のかつて映画のポスターが掲げられていた場所に「吉祥寺プラザスタッフのおすすめ作品」が飾られていました。「当館スタッフ、関係者のおすすめ作品です。いつまでも映画がみなさまの友人でありますように。」というメッセージとともに、劇場スタッフおすすめの映画の作品名がずらっと並べられていました。道行く人はおすすめ映画作品のポスターをまじまじと見たり写真を撮られたりと、閉館後も吉祥寺プラザを楽しまれているようでした。この企画はどうして行われたのでしょうか。
支配人「スタッフおすすめ映画のリストは私が企画しました。私自身のおすすめ映画も書いてあります。こちらで働いていたスタッフはもちろん、ここを辞めたスタッフも今でも付き合いというか、全く縁が切れてるわけじゃないので声をかけて、可能な限り昔のスタッフさんも含めました。みなさまにおすすめしたい作品ってなんだろうねというところからはじまって。それで、せっかくなら吉祥寺プラザスタッフのおすすめしたい映画を飾ってみようとなりました。みなさまにおすすめ作品はこれですよっていうのもあるんですが、私やスタッフ自身の思い出づくりでもあったんですよね。形に残りつつ、みなさまに少し喜んでもらって、スタッフにも思い出として残せるようなものって何かなって、考えました。あのとき、こういう作品を自分は選んだんだなというのは残ると思うんですよね。それぞれの年代のスタッフが、それぞれ人生が進んでいって、あのときに勧めた作品とはまた違うものが例えば10年後に出てくるかもしれない。そんなときに(今回のことを)思い返すと、少し感慨にふけられるかなっていうか(笑)」
吉祥寺プラザの前を通る街の人にも、吉祥寺プラザで働いていた人にも楽しんでほしい。支配人の方が、いかに観客やスタッフのことを考えていたかが垣間みえるエピソードです。たしかに、昔観た映画も今観ると感じ方が全然違うことってありますよね。
支配人「若いときに観た映画を時を経て観ると、また感じ方が違うというのはありますよね。(映画作品を選ぶというのは)今の自分を投影できると思うんです。みなさんに勧めたい作品を通して自分自身を再確認するっていうのかな。作品を通じて、あの時の自分ってこうだったっていうのを思い返してもらえたらっていうのが、スタッフに対しての思いですね。ある意味、好きな作品はこれですよっていうのは本当に恥ずかしいというか、己をさらけ出すようなものだと思うんですよね(笑) やっぱり閉館って寂しいですけど、掲示したポスターに書かれてあるとおり、みなさまにずっと映画を楽しんでほしい。私はやっぱり、家族でもなく恋人でもなく、映画って友人のようなものだと思うんです。(ポスターという形で)見てもらえるものがあるのって、なんだか広がりがあるじゃないですか。(吉祥寺プラザは)閉じちゃいましたけど、映画ってたくさん観ようと思えば観る機会がいろいろありますよね。だから、もっともっと映画に触れ続けてくださいねっていう。“良き友だち”として映画と接してくださいねっていう気持ちです。」
“映画は良き友だち”…本当に良い言葉だなと思わずグッと来てしまいました。吉祥寺プラザから感じる温かさの理由がわかった気がします。今回の特集の最後は、吉祥寺プラザスタッフさんによるおすすめ映画作品のリストで締めくくりたいと思います。吉祥寺プラザさんの映画リストがみなさんの“良き友だち”になったら嬉しいです!
simura『奇跡(1954)』 『あの夏、いちばん静かな海。』『恋人たち(2015)』 『枯れ葉』
aoyama『ヤンヤン 夏の想い出』『街のあかり』『ディア・ピョンヤン』
yamaguchi『猫の恩返し』『ジュラシック・ワールド』『キングスマン』
y.takahashi F 『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』『グレイテスト・ショーマン』『PERFECT DAYS』
joune『博士の異常な愛情』『戦場にかける橋』『十二人の怒れる男』『スクール・オブ・ロック』
murai『ミリオンダラー・ベイビー』『ブロークバック・マウンテン』『第七天国』『タイタニック』
ozaki『ライムライト』『ニュー・シネマ・パラダイス』『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』『冬の旅』
kudo『ステキな金縛り』『グレイテスト・ショーマン』『かぐや姫の物語』
murakami『グレムリン』『フィフス・エレメント』『下妻物語』『東京ゴッドファーザーズ』
kamikura『ズートピア』『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』『夢みるように眠りたい』『波紋(2023) 』
seno『あぜ道のダンディ』『歩いても歩いても』『川っぺりムコリッタ』
yamaya 『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』『ハウルの動く城』『日の名残り』
y.takahashi M『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ! 夕陽のカスカベボーイズ』 『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナルスケール-』
miyazaki『コルチャック先生』『ストレイト・ストーリー』『話の話』『菊次郎の夏』
hirasima『グラン・トリノ』『最強のふたり』『かぐや姫の物語』
watanabe『佐々木、イン、マイマイン』『春江水暖』『フィツカラルド』
kikuchi『アイム・ノット・ゼア』『リアリズムの宿』『鬼畜大宴会』『オーケストラ・リハーサル』
yamashita 『ギルバート・グレイプ』『ふたり』『インターステラー』
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目11−19
【写真=編集部撮影】
1975年に創刊し、2022年3月で創刊47年を迎える週刊きちじょうじ。吉祥寺のおいしいグルメ、カルチャー、話題のトピック、ニュースがわかる、吉祥寺で暮らす人のためのタウン誌のオンライン版です。